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【長崎県名誉県民 松尾敏男展】(2)「樹海」 隔絶した生活感情反映

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【長崎県名誉県民 松尾敏男展】
(2)「樹海」 隔絶した生活感情反映

「樹海」(1970年、東京国立近代美術館) 「樹海」(1970年、東京国立近代美術館)

 画面最下部の地中に横たわっているのは、明らかに死をイメージさせるミイラである。生と死を作品のテーマに据えるようになったのは、自らの戦争体験に起因している。

 生きるか死ぬかの体験を経たわずか十数年後、高度経済成長のなかで豊かな暮らしをしている自分に、強い不安を感じていた。そうした不安や自らの厳しい生活感情を作品に反映させるべきだという強い信念を持ち、伝統的な日本画ではおよそ取り上げられることのなかったモチーフを積極的に採用した。つまり伝統的な花鳥画を素直に描くことと、当時抱いていた生活感情とはあまりにも隔絶があったのである。

 ミイラを描くことについて、師で昭和を代表する日本画家、堅山南風は難色を示したという。しかし松尾は初めて師の意向に反して、自らの信念を貫いた。本作により、3度目の日本美術院賞・大観賞を受賞し、翌年同人へと推挙された。本作は前衛的な日本画を追求してきた初期の代表作である。(長崎県美術館 学芸員・森園敦)

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 「長崎県名誉県民 松尾敏男展」は3月11日まで、長崎県美術館(長崎市出島町)で開催。