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あすEV路線バス熊本で発車 イズミ車体製作所熊大など共同開発、低価格で実用化

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あすEV路線バス熊本で発車 イズミ車体製作所熊大など共同開発、低価格で実用化

「よかエコバス」の前で運行開始のテープカットを行う熊本大の関係者ら=1月19日、熊本市中央区 「よかエコバス」の前で運行開始のテープカットを行う熊本大の関係者ら=1月19日、熊本市中央区

 路線バスのEV(電気自動車)化を促進しようと、熊本大や特殊車両メーカー「イズミ車体製作所」(熊本県大津町)などが連携し、共同開発したEVバスの試験車が完成した。5日から熊本県内で実験的に走らせる。九州産交バスの車両に日産自動車が販売するEV「リーフ」の部品を組み込み、徹底したコストカットにこだわったのが特徴だ。(南九州支局 谷田智恒)

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 「街の中を黒煙を吐き、走るバスを見てこれはなんとかしなければと思った」

 イズミ車体製作所の古庄忠信会長は4年ほど前、EV研究の第一人者、熊本大大学院先端科学研究部(工学系)の松田俊郎准教授に出会った。

 それまで自社で路線バスのEV化を目指してきたが、松田氏とタッグを組み、EVバスの研究開発を加速させようと試みた。

 EVバスは排ガスがゼロで、走行中のCO2(二酸化炭素)も排出しないといった優れた環境性能を持つ。

 ただ、現在、国内で販売されているEVバスの販売価格は1台で8千万円程度と、ディーゼル車体の約4倍もする。それが普及拡大へのネックになっていた。

 イズミ車体製作所と熊本大は開発費用約4億円をかけ、大型車用のEVシステムの技術開発を急いだ。開発費は全額、環境省からの補助を受けた。

 九州産交バスの既存のディーゼルバスの車体に、既存のバッテリーやモーターを組み込み、EVバスに改造していった。改造費は約1千万円程度に抑えた。

 開発プロジェクトには、日産も参戦した。「リーフ」開発で培ったノウハウを提供した。

 バスのエンジン部分にモーターを配置し、後部と床下にバッテリー(リチウムイオン電池)を収納した。

 リーフで使われるバッテリーモジュール(複合部品)4個を並列でつなぎ、2基のモーターを減速機で連結するなどした。1回充電すると、約50キロ走る試験車が完成した。低価格で軽量化も実現できた。

 1月19日にお披露目のセレモニーが熊本市内で行われた。松田氏は「いずれ日本自動車車体工業会に加盟する車体メーカーのどこでも生産できるように、EV関連の技術を標準化したのは大きい」と開発の経緯を説明した。

 その上で「環境面にも配慮し、コスト面とのバランスを取った。EVバスを全国に普及したい。日本全体の環境改善にも貢献してくれるはず」と胸を張った。

 試験車の愛称は熊本市が公募した結果、「よかエコバス」に決まった。

 EVバスは、日ごろ乗り慣れた路線バスよりも音が静かだ。車体前面の辺りから、車が近付くのを周りに知らせる「シャー」という音が聞こえるだけ。試乗会では「乗り心地が快適で、良かった」と大人にも子供にも好評だった。

 試験車は、平成30年度末まで平日、交通センター(熊本市中央区)と木山営業所(益城町)とを結ぶ路線など6路線で走る。

 九州産交バスの森敬輔社長は「EVバスはこれまでは遠い存在だったが、手が届く価格で改造できた。バス業界にとり、朗報だ。実証試験では、路線バスとしての実用性などをしっかり検証したい」と語った。

 性能面などに問題がないと合格点が得られれば、全国での実用化への道が広がる。地方創生にもつながる。

 イズミ車体製作所の古庄氏は「車体メーカーの業界全体で、EVバスの導入を促進し、環境改善に貢献するようにしたい。熊本発で、EVバスの技術を発信したい」と意欲を示す。