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広島の離島で帝国ホテルの味を バーテンダーの田村さん移住、清風館でカクテル提供

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広島の離島で帝国ホテルの味を バーテンダーの田村さん移住、清風館でカクテル提供

 東京の帝国ホテルで約40年バーテンダーを務めた田村知行さん(69)が、移住した瀬戸内海の離島にある温泉ホテルで、浴衣姿の宿泊客に腕を振るっている。時の首相や有名俳優の舌を楽しませてきた技で、美しい島の情景を1杯のカクテルに詰め込む。

 大崎上島の「きのえ温泉ホテル清風館」にあるバー。薄紫のカシスベースのカクテルを注いだグラスの縁に、輪切りのレモンを満月のように添える。瀬戸内の夜空を表現した「フルムーン大崎」が出来上がった。田村さんのカクテルは、日々の暮らしの中で触れる雄大な自然から生み出される。

 「バーテンダーは天職」と語る田村さんが帝国ホテルに入ったのは24歳の時。ウエイターとして勤務する合間に約300あるレシピを覚え、水を使って練習し、分量を体にたたき込んだ。

 30歳を過ぎて、一人前のバーテンダーとして客前に出られるようになり、国内外から訪れる著名人をもてなした。

 退職間近の平成26年、先に島に移住していた元同僚を訪ね、都会とは違う静寂と、ゆったりした時の流れに強く引かれた。「この島をついのすみかにしたい」。海辺の一軒家を購入し、一昨年7月、千葉県から移り住んだ。

 最初は仕事を続けるつもりはなかったが、経歴を知った清風館の社長が田村さんを迎え入れるために専用のカウンターを新設。再びシェーカーを振る生活が始まった。

 評判を聞き訪れた島民や、バーになじみのない若い客にも「気軽に飲んだ1杯が、カクテルとの幸せな出合いになればいい」と帝国ホテルで培った技で振る舞う。「新作のアイデアはまだたくさんある。体力の続く限り、お客さまが喜ぶお酒を出し続けたい」とほほ笑んだ。