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下関市、クルーズ乗客引き留め作戦 官民挙げて誘致加速

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下関市、クルーズ乗客引き留め作戦 官民挙げて誘致加速

 山口県下関市は、下関港への寄港が相次ぐクルーズ船の乗船客に、下関の街を回遊してもらう引き留め作戦に出た。日本一のクルーズ船寄港地、福岡・博多港の飽和状態を背景に、寄港数を伸ばす半面、乗船客がバスで九州方面に流出するケースも多い。福岡市は下関の観光地に乗船客を誘導し、長期滞在を促す仕組みも模索する。両市の連携で、さらに経済効果を高める。 (大森貴弘)

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 下関港には昨年、クルーズ船が57回、寄港し、10万5千人が訪れた。いずれも過去最高だった。

 今年はさらに乗船客が増えるとみて、下関市沖に浮かぶ人工島(長州出島)では岸壁の延伸工事が進む。

 今年4月には、世界最大級の22万トン級の船も着岸できるように改善される。

 これを受け、前田晋太郎市長は15日の定例記者会見で「クルーズ船の船会社がお客さまに下関を紹介できるよう、より魅力的な観光プランを提案する」と語った。

 今後、観光部局にハッパをかけ、下関の観光名所を詳細に盛り込んだ具体的な計画を船会社に説明して回る。九州・山口をはじめ海外の旅行代理店にも、こうしたプランを売り込む。

 クルーズ船の乗客を当て込んで、市内の商業・物販施設から旅行業者に、下関をめぐるコースを提案する動きも出てきた。

 官民挙げてのクルーズ船誘致の動きは加速する。

 ●ウィンウィン

 「福岡の高島宗一郎市長には昨年、大変、協力していただいた。もう、福岡は一杯。(博多港の)能力を超えた分は、下関にどんどん回してください(笑い)」

 8日、安倍晋三首相はおひざ元の下関市で開かれた「新春の集い」でこうあいさつした。集いに出席した高島氏も、笑顔で応じた。

 実際、博多港のクルーズ船の受け入れ能力は限界に近い。昨年の寄港回数は326回(速報値)で、3年連続で日本一になる見込みとなった。

 高島氏は16日の記者会見で「キャパシティー(受け入れ能力)は限界で、毎年、130件の入港を断っている。その寄港先をどこに持っていくかで、クルーズ船の誘致に意欲的な自治体間では、熾烈(しれつ)な競争が見られる」と述べた。

 市当局によると、今年も400件の予約が見込まれる。

 あふれた船の運航会社は航海日程を優先させようと、博多に近い港を探す。

 福岡市クルーズ支援課は「船会社との事前協議の場では、下関市が船の誘致に積極的ですと、話題に上げるようにしている」と話す。

 高島市長も後押しする。

 16日の記者会見でも「下関は、新幹線一本で博多から行ける。博多(の街)に泊まり、次の日に下関にいけば、下関で、もう一泊が可能になる。新しい旅のスタイルでお金を落としてもらいたい」と述べた。これが実現できれば、福岡、下関両市がともに恩恵を受けられる。

 入管難民法では、クルーズ船の乗船客の乗降場所は寄港地に限られる。その規制を緩和すれば、博多港で下船し、船だけ下関に回送し、下関港から乗船するといった旅が可能になる。  宿泊も伴えば滞在期間は長くなり、経済効果も高まる。福岡市は、規制緩和の実証実験を始めたい意向だ。

 ●目標は500万人

 クルーズ船の寄港は全国的に増加傾向にある。特に、九州・山口で勢いがある。国土交通省九州地方整備局によると、平成28年の寄港は715回で、25年の約6倍に増えた。

 中国からの観光客が多い。なにより地理的に近く、短期でも旅日程を組みやすい。各地の港では、クルーズ船の大型化に合わせて岸壁を延長し、旅客ターミナルビルを整備したりと対応に追われる。

 羽田空港に空路、入国し、横浜港から船に乗り込むといった「フライ&クルーズ」など、クルーズ船を生かした旅行プランも多様化する。

 国交省によると、平成28年のクルーズ船での外国人観光客は全国で199万人だった。政府は2020年東京五輪・パラリンピックでは500万人との目標を掲げる。目標の達成に向け、首相のおひざ元の奮起は欠かせない。