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希少種の宝庫・奄美大島など世界自然遺産へ準備急ぐ 保護策に観光ガイド育成

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希少種の宝庫・奄美大島など世界自然遺産へ準備急ぐ 保護策に観光ガイド育成

奄美大島の山中で、観光客をガイドする「奄美野鳥の会」の高美喜男さん 奄美大島の山中で、観光客をガイドする「奄美野鳥の会」の高美喜男さん

 鹿児島、沖縄両県の「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」は、独自の生物進化がみられ、希少種の宝庫とも言える世界自然遺産候補地だ。今年の夏に予定される国連教育科学文化機関(ユネスコ)の登録審査を前に、奄美地方では、動植物保護の計画作りや観光ガイドの育成が急ピッチで進む。

 ●独特の自然

 「ここでしか見ることのできないものが、たくさんあるんですよ」と、奄美野鳥の会の高美喜男氏(66)は語る。およそ200万年前までに大陸から切り離され、常緑広葉樹が発達する奄美大島では、動植物が原始的な姿を保っていたり独特の進化を遂げたりしているからだ。

 高氏は「昔は自然が『開発の邪魔』とされた。行政による保護なんて考えられなかった」と振り返る。

 登録に向けた動きに伴い、環境や生態系への関心が高まった。一時は減った野鳥の数も回復しつつあると感じる。「島民も、地域の自然に誇りを持つだろう」

 ●猫を追って

 奄美大島の課題の1つは、捨て猫などが野生化した「ノネコ」が、国の特別天然記念物で絶滅危惧種のアマミノクロウサギをはじめ、希少生物を捕食してしまうことだ。

 鹿児島県によると、捕獲などの対策が遅れた奄美大島では、600~1200匹のノネコが生息するという。

 「早急にノネコ管理計画を作って取り組みたい」と、環境省の担当者は昨年秋、奄美市で開いた関係者らとの会合で表明した。

 「具体策を示さなければ、登録に影響するのではないか」といった指摘もある中で、行政側は計画策定を急ぐ構えを見せる。

 奄美大島では、希少植物が荒らされる違法事例も確認された。県などは林道に門扉を設けたりしながら、巡視に力を入れる。

 ●発信力

 登録に関わる人々からは「価値を伝えるのが難しい」との声も聞かれる。

 1993(平成5)年、白神山地(青森、秋田)と共に国内初の世界自然遺産となった屋久島(鹿児島)の「縄文杉」のような、象徴的な存在を欠くことも一因のようだ。

 奄美大島や徳之島などでは、自然に関する一定の知識を有するといった条件を満たす60人以上が「認定ガイド」として活動する。外国人観光客の増加も想定し、通訳の育成も始まった。

 奄美大島エコツアーガイド連絡協議会の担当者は「ガイドの質を高めるため、認定ガイド制度を設けた。島の魅力をきちんと伝えられる人材を増やしたい」と意気込む。

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【用語解説】奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島

 鹿児島県の奄美大島と徳之島、沖縄県の本島北部と西表島からなる世界自然遺産候補地。環境保全のため一帯は国立公園となっている。アマミノクロウサギやヤンバルクイナといった絶滅の恐れがある固有種が多く生息し、独特な生物進化がみられる。日本政府は2017(平成29)年2月、国連教育科学文化機関(ユネスコ)へ推薦した。白神山地(青森、秋田)、屋久島(鹿児島)、知床(北海道)、小笠原諸島(東京)に続く国内5件目の登録を目指す。