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【上州お宝発信】(4)草津温泉 100年先も残る景色でV字回復

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【上州お宝発信】
(4)草津温泉 100年先も残る景色でV字回復

 色鮮やかなライトに照らされた湯気が風に吹かれ、揺れる。写真を撮ろうと観光客は湯畑へと向かい、その流れは夜も衰えない。

 真冬の草津温泉。観光・旅行業界の専門紙「観光経済新聞」による「にっぽんの温泉100選」で15年連続1位に輝く温泉の“横綱”だが、草津町は近年まで入り込み客数の減少に悩み、財政的にも逼迫(ひっぱく)する時期が続いていた。町をV字回復に導いたのは、100年先でも通用する景色を目指したまちづくりだった。

 鍵は、観光の目玉で町のシンボルでもある湯畑周辺の再整備。戦後、湯の効能を求める客は減り、レジャー感覚の団体客が増えると、大型の宿泊施設が目立つようになった。そうした中で、問題となったのが2つの大きな駐車場の存在だった。便利な半面、景観を乱し客足が遠のく一因となっていた。

 「湯畑は日本でいうところの銀座。銀座のど真ん中に駐車場を置く必要があるのか。駐車場を置いて感動するのか」

 そんな疑問を抱いた黒岩信忠町長を中心としたプロジェクトチームが練った「湯畑広場再整備計画」が議会で承認され、再建策が本格的にスタートしたのは平成23年6月のことだ。

 チームには、サンストリート亀戸(東京都江東区)や海老名ビナウォーク(神奈川県海老名市)など全国各地で、まちづくりのプロデュースの実績がある北山創造研究所(東京都港区)の北山孝雄氏らも参加。100年前まで遡(さかのぼ)って時代背景を探った上で、ただレトロなだけでなく、おしゃれ感と華やかさを備えた新しいまちの景色を模索した。

 駐車場は廃止し、跡地には伝統的な建築様式を踏襲した「御座之湯」と、観光の拠点となるよう構想された「湯路広場」を26年までに完成させた。

 27年には観光の目玉「湯もみと踊り」が披露される「熱乃湯」も完成。一気に建設するのではなく段階的に施設を着工することで、町になじませる戦略は奏功し、入り込み客数は回復。27年度時点で300万人を突破した。

 しかし、チームは満足することなく、町の“大改造”を続けた。次に目を付けたのは「夜の草津」だ。

 夜になると宿にこもってしまう客に、まちに出て楽しんでもらうため、明かりの演出に重点を置く「灯路(とうじ)計画」を実行に移した。首都圏からの日帰り客が増加する中、宿泊客を安定して確保する狙いもあった。

 この計画には照明デザイナーで、東京・六本木ヒルズの演出なども手がけた面出薫氏が参加。湯畑と湯の川が流れる「西の河原公園」のライトアップが昨年までに完成した。

 念頭にあったのは、独創的で、どこにカメラを向けても絵になる景色。「主役」は湯気だ。

 「二度と同じ形になることがなく、絶対に再現できない」(黒岩町長)湯気がライトに照らされる写真を観光客は会員制交流サイト(SNS)に続々とアップ。若い女性らの心をつかんだ町は団体客に依存しなくてもシーズンを問わず、にぎわいを取り戻した。

 湯もみはもちろん、気軽に浴衣姿で歩ける湯畑周辺、どこを切り取っても絵になる景色、SNSを意識した演出-。いずれも草津町にしかない「宝」だ。

 都道府県魅力度ランキングを発表している民間調査会社、ブランド総合研究所(東京都港区)の田中章雄社長も「(他の市町村と)明確な違いを生み出している」と評価する。

 温泉のようにわき出るアイデアで、まちの強みを発揮するスタイルは群馬全体の活性化のヒントにもなりそうだ。 

 ◆ビジネスの視点で改革推進

 草津町は湯畑の再整備などに国の補助金などを最大限活用し、集客につながる温泉などに徹底して資金を投入。平成28年度までの7年間で約67億円も投じた。

 一方、22年時点で約57億円もあった町の借金は、28年度時点で約33億円まで減り、貯金は倍増した。入り込み客数もバブル期に匹敵する300万人を突破、29年度は330万人を見込む。