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【ちば新春人物記】神田外語大日本研究所所長・土田宏成教授

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【ちば新春人物記】
神田外語大日本研究所所長・土田宏成教授

 ■「JAPAN」を世界に発信

 開学30周年の節目となった平成29年を終え、新たな歩みを始める神田外語大(千葉市)。4月には2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、単なる観光ガイドなどにとどまらない「JAPANガイドブック」の発行、7月は約1400点の江戸時代末期~明治初期の貴重な資料の公開といった大きなプロジェクトを控える。その中核を担う同大日本研究所所長の土田宏成教授(48)は、年男の一年を飛躍の年につなげると誓う。

 ◆専攻は近現代の災害史

 「研究を通じて社会に貢献していきたい」。専攻は日本の近現代における災害史研究。日本の近現代史の中でも研究者がまだ少ない分野で、日々奮闘している。

 「過去の災害とその後の対策などを研究することは自然災害だけでなく、戦争やテロといった不測の事態の対策にも参考になる」とその意義を強調する。

 一例にあげるのが、土田さんの研究でも重要なテーマである関東大震災とその後の対策の進展だ。関東大震災では、地震によって、東京の広い範囲で、同時多発的に火事が発生。被害を拡大させたが、こうした同時多発の火災に対する防災対策は、後の空襲対策にも影響を与えたと分析する。

 八街市生まれ。災害史への関心を深めたのは、東大文学部在学中に直面した7年の阪神大震災。さらに23年の東日本大震災を目の当たりにしたこともあり、災害史の研究に一層傾倒するようになったという。

 「東日本大震災では、約1千年前に起きた貞観地震の存在が改めてクローズアップされた。過去の災害との比較や検討を行い、対策を社会に提言するのは歴史学者の責任」と話す。

 研究者となったころには少なかった日本近現代の災害史研究者も増え始め、28年には首都圏の歴史を研究する研究者の有志とともに「首都圏災害史研究会」を立ち上げ、近現代に東京周辺で発生した災害の研究に着手した。

 ◆グローバル人材を育成

 本業の研究活動に加え、大きなライフワークとなっているのが、日本研究所所長としての活動だ。

 同大では中国や韓国、ベトナムから約80人の留学生が日本人学生とともに学んでおり、グローバルに活躍できる人材の育成を目指している。日本人学生も日本に来る留学生にも「もっと日本のことをよく知ってほしい」。

 発行に向けて準備を進めている「JAPANガイドブック」は英語と日本語の見開きで、外国人の関心が高いアニメやアイドルといった文化などにとどまらず、政治や経済、外交、社会の課題など幅広い分野を網羅する。「海外で政治や経済について聞かれたとき、自国のことがわからないと答えられない」。そうした人材はいくら語学が出来てもグローバル人材ではないのではないかという思いがある。

 約1400点の貴重な所蔵資料の公開に向けたプロジェクト「洋学文庫」も大きな試みだ。江戸時代に長崎に滞在したドイツ人医師、シーボルトが弟子の日本人に宛てたオランダ語の手紙など、幕末期~明治初期の資料を初公開する。展示やデジタルデータにするかなど詳細は検討中という。

 自身が同大で過ごして15年目の節目の年。現代を理解するために過去を研究し、日本の情報をこれからも発信し続ける決意を見せた。(永田岳彦)