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消えゆく京町家の保全策は 京都市、上乗せ助成など支援検討

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消えゆく京町家の保全策は 京都市、上乗せ助成など支援検討

 京都市中心部に数多く残る「京町家」が次々と姿を消している。マンションなどの共同住宅だけでなく、訪日外国人の増加によりホテル建設用地として売却されるケースが増えているためだ。京都市は保全条例を昨秋制定。取り壊し時の届け出を努力義務にするなど所有者の責任を明確にし、解体から活用への流れを作る方針だ。しかし、所有者たちからは「財政支援の額が少なく、とても維持できない」などの声も上がり、町家は1日2軒のペースで消えている。保全に妙手はないのか-。

 京都市北西部一帯の西陣地域。設計事務所「もえぎ設計」顧問、久永雅敏さん(69)は5年前、同地域で町家に出合った。築100年以上経過しているとみられ、力強い木の軸組みとダイナミックな吹き抜け、明るい庭などに魅力を感じた。

 1棟まるごと借りて改修を施し設計事務所として使い始めた。吹き抜けの両端には耐力壁を増設して支え、2階の床には剛性を持たせるなどして地震の揺れの力を均等に逃す設計だ。建物がもともと持つ強度を減退させないよう留意したという。「設計事務所として利用形態の提案にもなれば」とも考えた。

 ■後絶たぬ解体…

 建物は木造であってもきちんと手入れをすれば2代、3代と使い続けることができる。しかし、久永さんのような例は少なく、解体される町家が後を絶たない。

 京都市によると、平成20~21年度の調査では4万7735軒の町家を把握していた。ところが28年度の調査では4万146軒に減少。市は少なくとも5602軒が滅失したとみており、年平均800軒、1日あたり2軒の割合で町家が消えている計算だ。さらに空き家の割合も前回調査の10・5%から14・5%と4ポイントも上昇した。

 京町家はバブル経済のころに相次いでマンションに変身した。現在は外国人観光客の増加による慢性的なホテル不足を受け、再び町家の土地を売却する動きが加速している。

 新町通(中京区)の山鉾(やまほこ)町に住む男性は、「町内の8割がマンション住民になってしまった。今では祇園祭を支えるのはたった1割」と嘆く。町家の消滅は伝統文化のあり方まで変えてしまう。

 売却、取り壊しの背景には、維持管理や修繕の費用負担が大きいことが挙げられる。世代をまたいで継承しようにも相続税がかかるなどの理由から、手放してしまうという。

 ■届け出制で歯止め?

 こうした流れに歯止めをかけようと、市は解体前の届け出の制度化を盛り込んだ京町家保存継承条例を昨年11月に施行した。

 全ての京町家に解体前の届け出を義務づける。ただ、努力規定なので届け出をせずに解体しても罰則はない。市の担当者は「届け出ることで解体を思いとどまるきっかけになれば」と話すが、久永さんは「とりあえず解体する際には言ってくださいね、というだけで何の効力もない」と手厳しい。

 さらに条例では、特に重要とされる「重要京町家」や「京町家保全重点取組地区」を指定し、それらを解体する場合には1年前の届け出を義務づけ、届け出をせずに解体した場合には5万円以下の過料の対象にした。

 ■線引き、何を基準に

 重要京町家や重点取組地区は、今後立ち上げる有識者や民間委員などによる審議会が決めるが、何を基準にどのように線引きするかは定かではない。

 さらに、町家の維持に対する助成も必ずしも十分とはいえない。木造住宅の耐震改修や空き家を活用する場合、市は京町家であれば通常の助成に30万~150万円を上乗せしているが、京町家に絞った保存支援策は講じてこなかった。市は30年度予算案に約2億円を計上し、京町家に特化した耐震改修などに対する助成の上乗せなどを充実させる方針だ。

 片方信也日本福祉大学名誉教授は「精密な京町家の調査を行い、分布図を作って市民に周知することから始めるべきだ」と話す。