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【上州お宝発信】(3)農業再生へ野菜ブランド化 伊勢崎で官民一丸「戦略会議」

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【上州お宝発信】
(3)農業再生へ野菜ブランド化 伊勢崎で官民一丸「戦略会議」

 上毛三山(赤城山、榛名山、妙義山)に囲まれた平野に利根川が流れ、上州名物の空っ風が通る-。

 伊勢崎市は、夏は暑く、冬は季節風が吹き、晴天に恵まれ、農業に適しているとされる。東京から100キロ圏内にある都市近郊型農業地域だ。

 ここには、市と地元農家が地域農産物のブランド化に取り組む県内でも珍しい団体がある。市「農&(と)食」戦略会議だ。

 研究部会ごとに、ブランド化に向けて野菜などの農作物を栽培。生産者の高齢化や後継者不足で農業の衰退が懸念される中、新しい農業の成功例として注目されている。

 戦略会議結成のきっかけは、市などでつくる「佐波伊勢崎地域担い手育成総合支援協議会」が主催した平成25年の講演会。農作物のブランド化を提唱する農業コンサルタントが講師だった。

 「いい話を聞いて勉強したのに、このまま終わらせるのは非常にもったいない」。市と、聴講した市内の若手農業経営者約30人の官民一体による組織が立ち上がった。

 26年4月の結成時から会長を務めるのは、6ヘクタールの農地で年間約18万個の白菜を生産している渡部利明さん(57)だ。

 太田市の二輪車販売会社のサラリーマンから、妻の実家に就農した異色の経歴を持つ。仕事を続けながら3年間の週末就農を行い、45歳の時に23年間勤めた会社を退職し、本格的に農業の仕事に就いた。

 「伊勢崎は『器用』すぎて、何でも作れる土地柄。冬の野菜だと路地のほうれん草や白菜、キャベツなど市内では60品目ぐらいは生産されている。でも、突出したものはなかった」と渡部さん。

 「今までの農業はJAに販路を求めていた。どんなに良い野菜を作っても高値での販売は無理。会員が一丸となり、官民一体のブランド化に向けて一つの目標を持った」という。

 ブランド野菜は高値で販売するため、糖度を高くするなど品質基準を設けている。化学肥料を使わず、最低でも3年かけて土を作り、自信が持てる作物を栽培して市にブランド化を提案する。ブランド化されると、自分で価格が付けられる利点があるという。

 渡部さんは農業の現状を「親の背中を見てきた2代目農家は経営の主導権を親が握っている。親の言ったことしかできない」と指摘。

 「それなりの野菜をつくりJAに売ってもらえれば、ある程度の農業所得が得られる。だが、苦労してできた野菜を販売したときに、結果として数字がついてこない」と嘆き、理想とする農業の形をこう語る。

 「人手不足の問題に対応するため、農家が農家の手伝いをする。トラクターも運転できるし、やり方を教えなくても作業ができる。忙しいときに手伝えば効率がいい。これができればすばらしい」 (平田浩一)

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 ■伊勢崎市「農&食」戦略会議 平成26年4月に結成。農畜産物のブランド化や6次産業化、地産地消の推進などに取り組むほか、会員同士の情報交換で農業技術の向上を図る。白菜やゴボウ、米など品目に応じて23の研究部会があり、これまでに市のブランドに指定されたのは「十兵衛」(白菜)や「美麗(みれい)」(イチゴ)、「はた織りこまち」(枝豆)など12品目に上る。会員は48人。