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【Colors震災と東北の、いろ】(下)ふくいろピアス 福島から届ける

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【Colors震災と東北の、いろ】
(下)ふくいろピアス 福島から届ける

 ■複雑だけど「かわいい」

 「ふくいろ」。それは、福島の色。福島の伝統工芸品「会津木綿」と「かわいい」を身につけてほしい。そして、「ふくいろピアス」が生まれた。つくったのは、「GIRLS LIFE LABO」代表の日塔マキさん(34)。東日本大震災で被災した。だけど、それを宣伝に使いたくはなかった。かわいい、と手にとってほしい、そして、できれば、できれば。被災地のことを感じてほしい。たった1センチほどのピアス。それに思いを込めた。

 「ふくいろ」は全部で8色ある。

 「たいようのいろ」「うみのいろ」「たべもののいろ」「やまのいろ」「そらのいろ」「はなのいろ」「どうぶつのいろ」。そして、あと1色。

 たとえば、「たいようのいろ」。それは夕日の色。子供が外で遊び、家路につくときの柔らかだけど、すこし寂しい色だ。

 「うみのいろ」は鮮やかな青。津波に襲われ、東京電力福島第1原発事故で汚される前の優しい海のイメージだ。

 それぞれの色は日塔さんと、大学生や社会人のボランティアでつくる「研究員」でアイデアを持ち寄って決めた。すべての色に流れる通奏低音は、当たり前の光景を失った福島。それぞれに再生への願いがつまっている。

 原発事故が起こったとき。日塔さんは「なぜ私たちだけが」と、恨みもあった。でも、気づいた。

 「福島県民として原発を止めることもできたはず。選ばなかったことには責任がある」

 「そらのいろ」。何色にでも染まる白にした。あの日の暗いグレーの空を「忘れたくない」。いま、晴れて澄み渡った福島の空を見上げて日塔さんは話した。

 「やまのいろ」。その緑の陰には、震災後に山登りした女性が「なぜそんなに危ないことをするのか」と責められて流した涙がある。「はなのいろ」は、桃の色。「放射能が心配で、奇麗な花に触れられずつらい」という悲しさ。そして、「どうぶつのいろ」。茶縞にペットを放さざるを得なかった記憶を留めたかった。

 それぞれの色の意味はメッセージカードとしてピアスに添えている。でも、それは、表からは見えない。

 「福島だから買ってもらおうということではない。女の子たちが『かわいいから』と言って手に取って買ってくれればいい」

 日塔さんの思いだ。

 ある日、伝統工芸品の研究や分析を手がけるいわき市の福島工業高等専門学校の渡部由香さん(19)が日塔さんのもとを訪れた。今春から東京のデザイン専門学校に進学する。ふくいろピアスを見て、「すごく、かわいい」と目を輝かせた。はなのいろの、桃色がお気に入りだ。着けてみた。「似合っているからプレゼントする」。日塔さんが言った。

 残る1色。それは、「ひとのいろ」だ。

 ピンクの下地に赤、青、白などいろいろな色の細い糸を織り込んだ。

 震災のとき、福島を応援する暖かい支援の声が届けられた。一方で、「福島は危ない」と心ない言葉や罵声も浴びた。複雑な心境だった。そして、日塔さんはひとつの答えを出した。「色々な意見を持っている人がいてもいい」

 ひとが福島に対して思うことは、まさに、十人十色だろう。そんな思いを表現したかった。だから、ひといろは繊細で複雑だ。

 日塔さんは言う。

 「距離が離れているからといって福島への関心が薄れることは残念。少しでいい、身近に感じてほしい」

 震災と東北の、いろ。それは、ひとのいろのように複雑だ。でもそれを、色にのせて、届けたい思いがある。そして、東北の被災地が色を取り戻したとき、復興は次の局面に入っていく。                           (内田優作、塔野岡剛)

                    ◇

 ■ふくいろピアス 平成25年1月から、「GIRLS LIFE LABO」(女子の暮らし研究所)が発売するピアス。染めた会津木綿の布を閉じ込めたつくりで、青、白、赤、桃、黄、緑、など、8色のバリエーションがある。伝統工芸に若い感性を取り入れ、若い女性だけではなく、高齢者や外国人にも好評を得ている。