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信州ワインバレー構想、今年で5年 山梨に並べ追い越せ 高評価が定着、晩餐会提供も

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信州ワインバレー構想、今年で5年 山梨に並べ追い越せ 高評価が定着、晩餐会提供も

 県内4つのワイナリー(ワイン醸造所)集積地域を核に県内産ワインの振興施策を掲げ、県が平成25年3月に「信州ワインバレー構想」を策定してから、今年で5年を迎える。この間、ワイナリーの数は10カ所以上増えて36カ所に達し、外国からの賓客を迎える晩餐(ばんさん)会で提供されるなど、高い評価が定着しつつある。県のワイナリー育成施策の推進が実を結びつつあり、遠く先を走っていたトップランナー、山梨の背中が見えてきた。今年は名実ともにナンバーワンを目指す。(太田浩信)

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 ◆ブドウ生産日本一

 ワインバレー構想で県が強くアピールするのは、ワイン用ブドウの生産に適した土地柄だ。農林水産省の特産果樹生産動態等調査によると、26年のワイン用ブドウの生産量は6276トンで、2位・山梨の3365トンを大きく引き離す。

 日照時間が長く昼夜の寒暖差が大きい気候風土が、どこよりも良質なブドウの栽培に適しているという。

 ところが、海外からの輸入果汁に頼らず、国産ブドウを100%使って国内でつくられる「日本ワイン」の醸造量は全国で2位ながら、トップの山梨が6458キロリットルなのに対し、長野は3745キロリットルと、かなり水をあけられているのが実情だ。

 日本ワインは、醸造技術の向上が著しく、数々の国際ワインコンクールでトップに輝き、「世界評価」が高まっている。県内ワイナリーも入賞を果たすなど奮闘をみせる。だが、残念なのは、県産ブドウを原料に山梨で醸造されたワインが最高賞に輝いていることだ。

 背景には、県内に大規模なワイナリーが少ない事情がある。ブドウ農園を県内に開設しても、醸造するのはワイナリーが集積する山梨で-という大手メーカーの経営姿勢も絡む。メルシャン(東京)も、上田市や塩尻市などでブドウを収穫し、山梨県甲州市にある「勝沼ワイナリー」に搬送し醸造している。

 ◆県内への建設決断

 ただ、日本ワインの人気が高まり、勝沼ワイナリーの醸造能力が限界に近づいているのも事実。そこで同社は、ワイン畑を有する上田市と塩尻市にワイナリーを建設する決断をした。

 「弊社のワインづくりのモットーは、まずは『ブドウありき』。『テロワール(生育環境)』と呼び習わしているが、いろいろな風土、立地によってブドウのできはかなり変わってくる」

 昨年10月に県庁を訪れ、阿部守一知事と懇談した同社の代野照幸社長は、決断に至った理由をこう説明した。同時にこうも言った。

 「長野は川があったり山があったりで風土に恵まれているので、素晴らしいブドウができる。日本ワインを引っ張っていける産地だ」

 塩尻市に建設する「桔梗ケ原ワイナリー」は今年9月の完成を目指す。車庫のような小規模スペースで、高品質のワインを醸造する「ガレージワイナリー」をイメージしたそうだ。

 31年秋の完成を予定する上田市の「椀子(まりこ)ワイナリー」は、同社が所有する最大のブドウ農園「椀子ヴィンヤード」に近接させて建設する。見学や直販機能を備えた「ブティックワイナリー」として、ワインツーリズムにも一役買う。

 長野は都道府県で唯一、酒振興の専門部署である県日本酒・ワイン振興室を設置している。宮沢勉室長は「個性あるワイナリーが育ち、品質もどこに出しても高い評価が得られるようになった」と現状を分析。その上で、販売量に直結する「ブランド力」が次なる目標だと強調する。

 ◆通の間で話題

 その足がかりを探していた中、昨年11月、トランプ米大統領が訪日した際、うれしいニュースが飛び込んできた。

 東京・元赤坂の迎賓館で開かれた晩餐会で、マンズワイン小諸ワイナリー(小諸市)の赤ワイン「ソラリス 信州東山カベルネ・ソーヴィニヨン2013」が提供された。ワイン通の間にもその話題は広がっている。

 このワインは、上田市で収穫されたブドウを原料に醸造され、同社の最高ランクに位置付けられる。1本(750ミリリットル)の価格は7千円(税抜き)だが、すでに小売店には在庫がない。同ワイナリーの川俣昌大工場長は「外交の場面で使うため、外務省のワイン庫に入っていたのではないか」と推測する。

 川俣氏は、従業員約40人の誇りになると喜び、「地道に続けてきた努力が実った。国を代表するワインとして提供していただき、光栄だ」と胸を張る。

 県産ブドウを使ったワインは、一昨年の伊勢志摩サミットでも3種類提供された。2種類は県産ブドウを山梨で醸造したものだが、もう1種類は東御市のヴィラデストワイナリーが醸造した「ヴィニュロンズリザーブ シャルドネ2014」だった。

 いずれもシェフ自慢の料理を引き立てるワインだと、舌が肥えた各国首脳をうならせた。

 宮沢氏は「数ある日本ワインの中でも、長野で生まれた『NAGANO WINE』は別格。冬季五輪開催地で国際的な知名度もあり、世界で通用するワインになる素質は十分だ」として、さらなるブランド力アップやワイナリーの振興策に力を尽くすという。