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【年の瀬記者ノート】避難指示解除、廃炉作業… 「振り返らず、今は前へ」

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【年の瀬記者ノート】
避難指示解除、廃炉作業… 「振り返らず、今は前へ」

 まもなく終わる平成29年。福島でもさまざまな出来事があった。福島市に拠点を置く室屋義秀さんのエアレース総合優勝、県営あづま球場(福島市)での2020東京五輪の野球・ソフトボール開催決定など、県民を笑顔にさせるニュースも多かった。一方、神奈川県座間市のアパートで9人の切断遺体が見つかった事件では福島市の女子高校生も被害者となったほか、下郷町の連続遺体遺棄事件など凄惨(せいさん)な話も、少なくなかった。そんな1年を思いつくまま、振り返った。(竹中岳彦)

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 東京電力福島第1原発事故により富岡、浪江、川俣、飯舘の4町村に出されていた避難指示が3月31日~4月1日に解除された。一時、11市町村に1150平方キロあった避難区域は、370平方キロ(県土の2・7%)まで縮小した。

 富岡町では災害公営住宅の整備が進み、10月にはJR常磐線富岡-竜田駅(楢葉町)間での運転が再開。川俣町山木屋地区には復興拠点の商業施設「とんやの郷」が、飯舘村には「いいたて村の道の駅までい館」がオープン。生活環境の整備や来年4月の学校再開に向けた取り組みも続く。

 12月には環境省が34年春の避難指示解除を目指し、帰還困難区域での特定復興再生拠点(復興拠点)整備に向けて、双葉町内での除染や建物の解体を始めた。「ふるさと再生」の歩みは、新たなステージを迎えつつあるが、それに伴い、新たな問題も増えている。

 帰還者の多くは高齢者で「若者が戻ってこない。このままでは地域の将来が心配だ」との不安をよく耳にする。ふるさとに戻ったものの生活の不便さを訴える人も多く、イノシシなど野生動物へのおびえを口にする女性にも会った。

 若年層や子育て世代は「働く場所がない」「(避難先になじみ)生活環境を変えられない」といった思いが強い。復興拠点整備も「線引き」による地域分断を懸念する声は根強い。「光が強くなると、影も色濃くなる」(内堀雅雄知事)一例といえよう。

 「(帰るか否かは)それぞれの事情があり、それぞれの判断」(30代男性)を求められる住民の心痛や苦悩は、想像に難くない。それだけに、ある男性の一言が忘れられない。

 「『心に寄り添う』って言うのは簡単だけど、実行するのは難しいんだよ」

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 福島第1原発をめぐる動きもさまざまあった。3号機の燃料棒取り出しに向け、ドーム形のカバー設置作業が進められたほか、1号機も防風フェンスの取り付けが終わり、来年1月中旬ごろから、オペレーティングフロアのがれき撤去が始まる予定だ。

 また、3号機の圧力容器底部に燃料デブリとみられるものが見つかり、取り出す方法として、格納容器内を水で満たさない「気中工法」とする方針が示されるなど、40年はかかるといわれる廃炉作業も、少しずつ、それでも着実に進む。

 中でも、作業環境の改善にはちょっとした驚きを覚えた。建屋周りなど今も線量が高い所はあるが、広大な敷地の95%は重装備をしなくても行き来や作業ができるようになった。1日約6千人が働く現場だけに、安全に着実に廃炉が進むよう、願ってやまない。

 「過去は戻らない。振り返ることも大切だけど、今は、とにかく前に進まないと。そのためには、誰かに何かをやってもらうのではなく『自分に何ができるか』を考え、実践することが大切。われわれにはその力がある。みんなが力を出し合えば、福島も日本も絶対によくなるよ」

 心の持ちようを取材先に教わった。来年はこの言葉を常に気にかけて動き回ろうと思う。