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被災した日田彦山線、復旧への調整難航 協議の場求めるJR九州 自治体側「まずは自社努力を」

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被災した日田彦山線、復旧への調整難航 協議の場求めるJR九州 自治体側「まずは自社努力を」

今年7月の豪雨で被害を受けた日田彦山線の鉄橋=福岡県添田町 今年7月の豪雨で被害を受けた日田彦山線の鉄橋=福岡県添田町

 九州北部豪雨で被災した日田彦山線の復旧に関し、JR九州が自治体に呼びかけた協議会設置が難航している。同社は「単独復旧は困難」と訴えるが、沿線自治体から「自社努力」を求める声が上がり、両者の主張は平行線をたどる。加えてJR九州は、来春のダイヤ改正で九州全域で運行本数を大きく削減する。人口減少社会を見据えたローカル線をめぐる問題提起が、波紋を広げている。(高瀬真由子)

 「路線がなくなれば、人口流出で過疎化が相当進む。鉄道は地元の生命線。一日でも早く復旧してほしい」。日田彦山線沿線にある福岡県東峰村の渋谷博昭村長は、産経新聞の取材にこう語った。

 同線は北九州都市圏と筑豊地方、日田を結ぶ「地域の足」だが、7月の災害発生後、添田(福岡県添田町)-夜明(大分県日田市)で不通が続く。受験シーズンを前に、不通の影響で進学先を悩む中学生もいるという。

 JR九州は復旧費用が70億円となると試算し、「単独での復旧は難しい」と説明する。しかし渋谷氏は「まずはJRが復旧のための方針をつくり県と話し合ってほしい」と主張する。

 福岡県の小川洋知事も今月7日の県議会で「復旧は、当事者であるJR九州が第一義的に担うもので、まずは自社努力による復旧方針を示すべきだ」と、渋谷氏らに同調した。70億円はあくまでJR九州の試算であり、県の災害復旧事業と調整すれば、負担を軽減できる可能性があると強調した。

 ■継続性のない路線

 ただ、JR九州が頭を悩ませるのは、当面の復旧費だけではなく、将来の採算性だ。

 青柳俊彦社長は今月19日、「(復旧費用の)70億円を借りることは可能だが、これから先30年を考えたときに、自信を持って路線を継続できる状況ではない。継続性のない路線に投資はできない」と語った。

 JR九州発足からの30年間で、同線の利用者は大きく減った。

 同社が今年7月に発表した1日1キロ当たりの平均通過人員を示す「輸送密度」によると、不通区間を含む夜明-田川後藤寺は昭和62年度の1103人に対し、平成28年度は299人と、3分の1に落ち込んだ。輸送密度の最多は鹿児島線小倉-博多間の8万2866人だった。

 「経営的にみれば、とっくになくなっている路線」。青柳氏はこう説明した。その言葉には「これまで自社努力によって路線を維持してきた」との思いがにじむ。

 そこに災害が発生した。JR九州は豪雨災害からの復旧を、路線の将来を議論する「きっかけ」にしようととらえたが、自治体サイドは「復旧議論を通して、廃線にするのではないか」と疑心暗鬼になっている。

 ■死活問題

 利用者減少に直面する路線は、日田彦山線だけではない。

 肥薩線や日南線などの計11区間で輸送密度は1千人を下回る。そもそも路線別の輸送密度を初めて公表した背景には、厳しい鉄道の状況を、理解してもらおうという狙いがある。

 JR九州は来年のダイヤ改正で、1日当たりの運行本数を計117本減らす。利用実態を踏まえた適正な輸送規模とするためだ。しかし、過去最多となる運行本数の削減に各地の自治体から不満の声が噴出した。

 宮崎県の郡司行敏副知事は「発表は非常に唐突で困惑している。JR九州とは地域活性化のパートナーであり、路線維持のために、互い知恵を出すことが必要。(JR九州への支援は)場合によっていろんな手立てはある」と話した。

 路線の廃止や減少は人口や観光客減少に直結するだけに、自治体にとっては死活問題といえる。

 ただ、JR九州内では、ローカル線の将来像をどう描くかは、発足当初からの課題だった。自治体サイドが感じる「唐突さ」とは、意識の差がある。

 鉄道事業の収支改善という課題は、昨年10月に上場したことで、より重くJR九州にのしかかる。

 青柳氏は産経新聞などのインタビューに、来春以降の大規模なダイヤ改正について、九州新幹線長崎ルートが暫定開業する平成34年度まで、凍結する方針を示した。言い換えれば、それまでの間で、存廃を含めローカル線のあるべき姿を探ることになる。