産経ニュース

【年の瀬記者ノート】岩手発 震災復興で進む道路網整備

地方 地方

記事詳細

更新

【年の瀬記者ノート】
岩手発 震災復興で進む道路網整備

 ■時短、難所解消 運転の負担軽減

 東日本大震災後の岩手県は狭くなった。香川県を除く四国3県に匹敵する広大な面積に変わりはない。震災復興で自動車専用の高規格道路網の整備が進み、所要時間が短縮され、難所解消でドライバーの負担が大幅に軽減されたからだ。論より証拠である。試しに盛岡市から国道106号で宮古市まで東進、三陸沿岸道路伝いに宮城県境の陸前高田市まで南下後に釜石市まで北上し、釜石道を西進、東北道経由で盛岡市に戻るルートを走破した。(石田征広)

                   ◇

 午前11時18分のスタート時に49・8キロだった車のメーターは午後7時15分の到着時は414・5キロ。全行程364・7キロ、トイレや夕食休憩、片側交互通行の待ち時間を除くと6時間50分間のドライブだった。

 ◆山田宮古道の存在感

 記者は盛岡支局勤務が平成2、9、26年と3度目である。結論から言おう。震災前なら楽に9時間はかかったはず。盛岡市から三陸沿岸地域が身近になった。整備が急ピッチな三陸沿岸道路と釜石道の威力を改めて実感した。

 とりわけ、先月19日に開通した山田町と宮古市を南北に結ぶ三陸沿岸道路の山田宮古道路(山田-宮古南IC間、約14キロ)の存在感が大きかった。開通で供用済みの山田道路(山田南IC-山田IC間、約7・8キロ)と宮古道路(宮古南-宮古中央IC間、約4・8キロ)とつながり、延長約27キロの1本の道路になった。

 リアス式海岸を伝う震災前の国道45号とは天と地ほどの差だ。急カーブの連続で時速50キロがせいぜいだったのが、カーブも緩やかで制限速度80キロ。信号機もなく無料。震災前、宮古市から約50キロある釜石市に行くのに1時間半かかったのが1時間に短縮された。

 格段に快適なドライブだった。三陸沿岸南部の吉浜IC-陸前高田IC間(約28キロ)でも同じことが言える。震災前に釜石市から約45キロの陸前高田市まで1時間半かかったのが1時間になった。制限速度70キロ、道路から望む三陸沿岸の絶景が脳裏に残っている。

 まとまった距離の開通となり、震災前ははかない夢でしかなかった青森県八戸市-仙台市間(約360キロ)の全線開通が現実味を帯びてきた。山田宮古道路が震災後の事業区間で初の開通だったことも後押しになった。

 事前発表された開通予定通りに事業が進めば、平成32年度中にほとんどの区間が開通する見込みだ。全線開通で八戸-仙台は5時間、宮古-仙台は3時間、釜石-仙台は2時間半、陸前高田-仙台は1時間40分で結ばれ、3時間から1時間20分の短縮になるという。

 東北道と八戸道を通る仙台宮城IC-八戸IC間は3時間14分と速い。しかし、有料で冬期間は荒天で通行止めも覚悟しなければならない。三陸沿岸道路は無料で冬期間も雪はほとんど降らない。

 ◆バス観光に恩恵

 「全線開通の恩恵を最初にあずかるのは観光でしょう。東北のバス会社は増え続ける外国人観光客を誘致するため仙台空港からのインバウンドに力を入れている。無料の三陸沿岸道路は有力なルート。三陸沿岸の絶景も魅力的」。こう期待を込めるのは高速バスも運行するバス会社の関係者だ。

 釜石道は震災後に東和ICから約33キロの遠野ICまで延伸、平成30年度中に釜石JCTまでの全線(約80キロ)が開通予定だ。自動車産業や物流拠点が集積する県内陸南部との利便性が格段に向上するのを見越した波及効果が生まれている。

 海外コンテナ航路の拡充で、今年9月に釜石港で県内初のガントリークレーンが運用を開始。高さ約55メートルの巨大クレーンを見上げ、「釜石さんはうまくやったね。うちは…」とため息をついた三陸沿岸自治体の職員の姿が忘れられない。

 この利便性向上は釜石出張の会社員からささやかな楽しみも奪った。震災前は盛岡からの出張でも1泊が多かったのが、最近は日帰りが主流になった。午後4時半、道の駅仙人峠で出会った会社員は「三陸の新鮮な刺し身はお預けですわ」と缶コーヒー片手にライトバンに乗り込んでいった。