産経ニュース

土に科学、コメに愛 滋賀・竜王町の若井さん、「新米の味」金賞受賞

地方 地方

記事詳細

更新


土に科学、コメに愛 滋賀・竜王町の若井さん、「新米の味」金賞受賞

 ■米粉ビジネスも展開

 「日本一のコメ農家になる」。大工からコメ農家に転身し、今春から本格的に取り組み始めた竜王町鏡の若井康徳さん(43)が、今年の新米の味を競う全国大会で最優秀の金賞に輝いた。土壌成分を細かくデータ化して管理するなど、土づくりからこだわった成果。次に目指すは、国際大会での優勝と農業での地域活性化だ。(杉森尚貴)

 若井さんが出場したのは、山形県真室川町で11月に開催された「第19回米・食味分析鑑定コンクール:国際大会」(米・食味鑑定士協会など主催)の都道府県代表お米選手権。専用の機器で計測したタンパク質や水分量などをデータ化する県予選で最高値を記録し、県代表に選ばれていた。

 若井さんは、光沢と粘りが強さが特徴の「にこまる」という品種でエントリー。全国大会では、炊きあげたご飯を試食した農家らが投票する最終審査に進み、金賞を獲得した。「こだわりが実を結んだ」と喜ぶ。

                  * * * 

 江戸期から地元でコメ作りを続けてきた16代目。ただ、高校卒業後は「幅広い世界を見たい」と大工の道を選び、手が空いたときに実家の農業を手伝う程度だった。

 片手間で関わっていた農業だったが、農家の高齢化と離農者の増加、耕作放棄地の拡大などの現状に、危機を感じ始めた。「田んぼは3年放置されると元に戻らない。海外産の安価なコメが大量に入ると、このままでは日本の農業が終わってしまう」。

 大工を辞め、農業への専念を決心。今春、実家の「若井農園」を継ぎ本格的にコメ作りを始めた。差別化に向けてこだわったのは質。「米・食味鑑定士」や「調理炊飯鑑定士」などの資格を取得し、生産に科学的な要素を取り入れた。

 また、手間がかかるとして一般的でなかった多品種栽培に「田植えの時期などがずれるので一年でたくさんの米を栽培できる」と挑戦。現在は21品種を生産している。

 若井さんは「コメの味は土の味」と話す。今年初めて土壌検査も行い、窒素含有量など細かい成分をデータ化した。今回受賞の「にこまる」は、安定した土壌成分で生産された成果という。

                  * * * 

 コメの生産以外にも、地域の農業底上げへ独自の取り組みも始めた。若い世代に農業への理解を深めてもらおうと、参加者に田植えや稲刈りなどを体験してもらう「体験農園」を開園。「子供が初めて土に触れて食料の大切さを感じ、食べ物を残さなくなった」などと人気だ。また、今月10日には約100人の地域の子供らを集め、竜王町川守のキャンプ場で自ら収穫した餅米を使った餅つき大会を開いた。

 米粉を使用したクッキーやプリンの開発も始めており、県内のホテルから引き合いが来ている。今後は農家直営カフェなど、農家ビジネスを拡大していきたいという。

 今回出場した大会には「世界一」を決める国際総合部門もある。来年は次の目標である世界一に向け、改良を続けるという。

 若井さんは「楽しくおしゃれな農業で、農業と地域の活性化に役立ちたい。人手不足といわれるなか、大量生産以外にも、楽しく仕事をして農業で生計を立てられることを広めていきたい」と話す。