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【ZOOM東北】福島発 漫画で高校生に医療機器開発アピール 稼ぐ産業で定住促進

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【ZOOM東北】
福島発 漫画で高校生に医療機器開発アピール 稼ぐ産業で定住促進

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興の柱に、医療機器関連産業の集積を掲げる福島県が、1冊の漫画冊子を製作、昨年に続き県内の高校2年生に配布した。今回の冊子は、県立郡山北工高の生徒が医療機器を開発して、国際コンクールで2位に輝いた実話を基にした内容だ。県の狙いは-。 (内田優作)

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 漫画冊子のタイトルは「福島で医療機器!? 高校生物語」。郡山北工高コンピューター部員の男子生徒が周囲に刺激されて糖尿病の検査機器を開発、iCAN(国際ナノ・マイクロアプリケーションコンテスト)で2位に輝いたことで、医療機器開発の魅力に気づかされるというストーリー。仲間と議論したり、英語に苦労したりと、高校生らしいエピソードで医療機器開発を身近に感じさせるつくりだ。県医療関連産業集積推進室がA5判、30ページの冊子を1万9千部作り、県内102校の公私立高校に11月、配布した。

 担当の清水彰一室長は「高校2年は進路選択を控えた時期。その時期に配ることで、医療機器産業という『人の役に立つ仕事』への関心を喚起したい」と説明する。難しいテーマでも分かりやすく、親しみを持ってもらうため、漫画にしたといい、教育現場からも「非常にいい取り組み」と好評だ。

 ◆需要増見込める

 県が医療機器産業集積に力を注ぐのは、今後も需要増が見込める成長産業だからだ。

 昭和45年からオリンパスの内視鏡製造部門が会津若松に立地するなど、県内には医療機器産業が根付いていた。平成17年には「うつくしま次世代医療産業集積プロジェクト」を始動。産学対話の場となる「福島県医療福祉機器研究会」を設け、県立医大の医師のニーズと、地場企業の技術力をマッチングさせた。

 こうした取り組みは大きな成果を生み、18年には全国7位の628億円だった県内医療機器生産額は、26年には全国3位の1303億円に急増。医療機器受託生産金額は433億円、医療用機械器具の部品等製造金額も177億円で、いずれも全国1位に躍り出た。

 県が医療機器産業集積を進めるもう一つの理由は、若者の定住促進だ。「医療機器産業は景気の影響を受けにくく、安定している。安定した産業があれば、県外から他の産業が進出するきっかけになる」(清水室長)。この波及効果を、若者の定住促進に生かしたいとの思いがある。

 ◆しごとづくりに期待

 県が抱える大きな課題の一つが、若年層の人口流出だ。29年3月の県内大学新卒者の県外就職率は61・33%。県人口統計によると、28年4月からの1年間で、20~24歳の県民は4千人以上減少した。県復興・総合計画課の高橋由美恵主幹は「人口減少が続いて若い人がいなくなれば、さらなる人口減少につながる」と危機感をにじませる。

 このため、県は27年にまとめた「ふくしま創生総合戦略」に「しごとづくり」を掲げ、若者の定着・還流プロジェクトを盛り込んだ。働く場の確保に向け、医療機器産業集積に大きな期待を寄せているのだ。

 県はさらに、医療機器産業発展を支えるため、人材育成に力を入れている。「高度研究開発者コース」では、米シリコンバレーへの短期留学などを通して、医療機器開発や起業を目指す人材の育成を行う。今回の漫画小冊子の配布は、こうした人材育成の下地づくりの一つともいえる。

 年内にも漫画冊子を県ホームページで公開するほか、来年以降の配布や高校生を対象とした新たな働きかけを検討するという。