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木村汎氏がプーチン時代分析「次の任期 いばらの道」 仙台「正論」懇話会

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木村汎氏がプーチン時代分析「次の任期 いばらの道」 仙台「正論」懇話会

 仙台市青葉区のホテルメトロポリタン仙台で7日、開かれた仙台「正論」懇話会の第50回講演会。講師に招かれた北海道大名誉教授で国際日本文化研究センター名誉教授の木村汎氏の解説に約110人の来場者が熱心に耳を傾けた。

 講演後の質疑応答では、「プーチン氏に不測の事態が起き、ロシアが大きく変わる気配はあるのか」という来場者の質問に対して、木村氏は、来年3月に実施される大統領選でのプーチン氏の当選は確実視されているとした上で、次の任期となる6年を「いばらの下り坂と思う」と応じた。

 ロシアの資源は枯渇しつつあることから、西側の経済制裁はボディーブローのように効いていると指摘。現在は、経済苦に対するロシア国民の目を戦争による国威発揚でそらしていると説明し、「不満は今後6年間で必ず出てくる」と鋭く指摘した。

 先月7日にロシア革命100周年を迎えたにもかかわらず、記念行事を行わなかったことを挙げ、「人民側の反乱を恐れている」との見方を示した。

 仮にプーチン氏が排除されても、ロシア国内に民主主義の土壌が育っていないとし、「プーチン氏なきプーチン主義が続くだろう」とした。

 ■要旨

ロシアのプーチン大統領が来年3月の大統領選への出馬を表明した。当選が確実視され、プーチン時代があと6年続くことになる。プーチン氏がどういう外交戦略を取るかは、日本にとっても重要だ。

 プーチン外交の行動様式には3つの特徴がある。1つ目は「柔道型外交」と呼ばれる。2014年のロシアによるウクライナ南部クリミア半島の併合では、プーチン氏は電撃作戦を実行した。西側諸国の外交が交互に打つルールに従うチェス型だとすると、相手に隙があれば、いつ攻撃してもいい柔道のような外交との指摘だ。プーチン氏の特技が柔道であることから、柔道型外交と呼ばれるが、柔道を誤解している。柔道は精神性を求める修養の道だ。プーチン氏の柔道は勝つためだけのものだ。

 2つ目は「国内向け外交」だ。なぜ、2015年にプーチン政権はシリアへの空爆を行ったのか。それまでロシアは近隣のジョージア(グルジア)やウクライナといった旧ソ連構成国に軍事介入したが、シリアはロシアと国境を接しておらず、純然とした外国だ。

 東西の冷戦終結後、ロシア国民は米国一強に対抗したいと思っていたが、外国への攻撃をみて自国の力が回復したと大喜びした。クリミア併合時に83%台に上昇したプーチン氏の支持率はシリア空爆で89・9%とさらに上がった。

 3つ目は「ホテル泥棒外交」と呼ばれる隙間戦術だ。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が2013年に中国とのパイプの太い叔父の張成沢(チャン・ソンテク)氏を粛正したことなどで中国と北朝鮮の間にかすかな隙間があいた。ロシアはその隙間に入っていく。

 プーチン外交が成功している理由として、長期政権でプーチン氏が外交のベテランになっていることや、準独裁政治とも呼べるようなプーチン氏への権力集中などが挙げられる。

 こうしたロシアに日本はどう対応すべきか。日本がロシアに北方領土を奪われた経緯と、ロシアによるクリミア半島併合の経緯は似ている。日本はウクライナとスクラムを組んで、ともに固有の領土を取り戻す戦線に立つべきだ。

 日本人はもう少しロシアに関心を持つべきだ。日本人には北方領土問題について諦めムードや倦怠感(けんたいかん)がある。日本人は気が短いが、ロシア人は気の長い民族だ。粘り強く取り組む必要がある。ロシアが隣国であるのは運命だ。危険とともに生きるしかない。