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【人このまち このとき】「なるさわクリニック」稲垣智也院長(41)

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【人このまち このとき】
「なるさわクリニック」稲垣智也院長(41)

 ■無医村に開業2カ月 患者の応援励み、訪問診療も視野

 病院がなかった鳴沢村に「なるさわクリニック」を開業して2カ月。東京から移住した稲垣智也院長(41)は、平成14年に山梨医科大医学部(現山梨大医学部)を卒業。東京、埼玉で勤務医をした後、“第二の故郷”ともいえる山梨に戻った。村民ら患者の熱い応援に支えられ、高齢化時代の地域医療に取り組んでいる。                   ◇

 --無医村で開業しようと考えた理由は

 「東京出身で、東京での暮らしが長かったこともあり、いつか自然豊かなところで地域医療をやってみたいと思っていた。学生時代は今の中央市田富や昭和町に住んでいた。大学の先輩、後輩、同級生ら知り合いがいる山梨がいいのでは、と考えていたとき、鳴沢村が開業医を募集していると知り応募した」

 --決断には後押しもあったのか

 「鳴沢村には開業資金補助の支援制度があった。全国の『医療過疎』の地域で同じような制度があると思うが、タイミングが合った。もし支援制度がなかったら、鳴沢に来ることができなかったかもしれない。6千万円を補助していただいた」

 --開業から2カ月の手応えは

 「多くの方から『近くに医療機関ができてありがたい』と応援の言葉をいただき、励みになっている。開業はたとえ都会でも、来院者の確保に不安がある。患者が多くても、競争も激しいからだ。幸い、村内だけでなく、周辺市町からも来院いただき、本当にありがたい」

 --患者は高齢者がほとんどか

 「そうでもない。近くに幼稚園や小学校があるからか、幼児から高齢者まで幅広い。診療科も必ずしも内科だけに集中していない」

 --どんなクリニックを目指すのか

 「地域に愛される、地域密着のクリニックでありたい。医師は今は私だけだが、私は小児科医ではないので、乳幼児の対応は専門医の方がいい。週に何回か来てもらう態勢をつくりたい。医師の増員に備えて、診察室を2つそろえている」

 --埼玉では訪問診療をされていたとか。鳴沢でも必要では

 「訪問診療の意義は、1人暮らしで、運転もできないなど外来へ来られない患者さんに、定期的な医療を提供することだ。同時に、24時間、365日態勢で緊急対応もできなくてはいけない。いずれここでもやりたいが、そのためには多くの準備が必要だ」

 --具体的には

 「緊急対応もあり、訪問診療にはマンパワーの増強などが必要だ。地域の訪問看護センターや他の医療機関との補完、連携もしなければならない。国から訪問診療機関として指定を受ける必要もある」

 --どう実現するのか

 「訪問診療を行う開業医の多くは、休診日に訪問するが、それでは体が持たない。倒れて、撤退していく医師もいる。だから、富士河口湖町の複数の開業医との間で、訪問診療での連携を模索している。時間はかかるかもしれないが、相互協力の態勢を組み、負担を軽減しながら実現できる道を模索したい」

                  ◇

【プロフィル】稲垣智也

 いながき・ともや 昭和51年1月、東京都中野区生まれ。平成14年、山梨医科大医学部医学科(現山梨大医学部)を卒業。順天堂医院外科、呼吸器外科を経て、26年から埼玉県のクリニックで訪問医療に従事。29年10月2日、鳴沢村に外来専門の「なるさわクリニック」を開業した。診療科は内科、呼吸器内科、外科、呼吸器外科、皮膚科、アレルギー科。スタッフは看護師1人と事務職2人。家族は妻と5歳の長女。41歳。