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細かな情報で早めの防災 海老名市“気象予報士”職員が活躍

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細かな情報で早めの防災 海老名市“気象予報士”職員が活躍

 海老名市の財務部職員として大切な市のお金を管理する本業の傍らで、気象予報士として市内の気象災害発生の可能性をいち早く詳細に予想し、市民の安全を守り続けるスペシャリストが同市役所にいる。市財務部財政係主査の夏目雄一さん(41)だ。昨今、ピンポイントでゲリラ豪雨に見舞われたり、あっという間に川が増水したりするなど気象環境がめまぐるしく変わる中、市職員に気象の専門家がいることで気象庁などより細かな情報分析ができ、早めの防災対策につながっているという。(那須慎一)

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 海老名市役所3階の一室。夏目さんのデスクには、周りの職員とは異なり、ノートパソコンに加えてもう1台モニターがあり、天気レーダーの画像が映る。

 ■選挙と台風対策両立

 10月22日の衆院選投開票日よりかなり早い17日。夏目さんはモニターを見ながら、投開票日の22日夜から24日早朝に台風が直撃することをいち早く予想し、庁内に予報の1報を発出。これを受け、19日には、内野優市長をトップとする情報連絡会を開催し、投開票日当日の人員配置などを決定した。

 選挙と台風対策が重なり、厳しい人員態勢になる自治体も多数ある中、海老名市は22日朝に災害警戒本部を立ち上げ、昼には市内の全避難所開設を決定。人員の変更などを慌てて行うことなく、選挙も防災対応も両立できた。

 「内野市長には『空振りは構わない』といわれている。予報は出すが、最終判断は市長が行う」ということもあり、失敗を恐れずに予報を出しているという。

 夏目さんは、小学校の高学年当時から、NHKの正午前や午後7時のニュース前の詳しい気象情報をチェックするようになり、「中学生のときには、センター試験の地学の試験は解けました」というほど、気象に詳しくなった。気象好きは変わらず、大学も気象に重要な流体力学を学べる東京理科大学の物理学科に入学した。

 在学中、2度目の挑戦となった平成15年度の試験で、合格率数%といわれる気象予報士試験を突破した。同年に行った就職活動で、海老名市と気象庁の両方から内定を得たが、「気象予報士の資格は、民間企業や地方公共団体で災害対策に役立てるべきものと考えた」こともあり、市役所に入った。

 ■失敗を乗り越えて

 実は、夏目さんにも大きな失敗がある。26年2月7日から、市内で32センチに及ぶ積雪を記録した大雪のときのことだ。

 この大雪は予想できたが、もう一回、大雪が見込まれたものの、「上空の気温が上昇するので、雪ではなく大雨になる」と予想。しかし、1週間後の14日朝から「数百年に一度レベルの大雪」に見舞われ、市役所前広場で46センチもの積雪を記録した。

 この失敗の経験から、より市民のための予想の重要性を痛感。加えて市は南北に11キロ、東西に6キロしかないものの、高低差などもあり、北と南で天気が異なるほか、雷雨は発生しにくいといった地域特性を考慮した地域密着のピンポイント情報の重要性を認識し、27年4月以降は財務の仕事と予報業務を兼務して、積極的に情報を出すようになったという。

 海老名市だけでなく、近接する自治体にも情報を提供する場面もあることから、「気象予報士の資格を持ちつつも仕事に生かすことができない行政職員は多くいると思う。ぜひ全国的にも、地域にとって正確な予報を出せる予報士が活躍できるようになったらいい」(夏目さん)と期待を寄せる。地方自治体では、地域の防災対策が喫緊の課題となっており、役所内に気象のプロを配置する動きを加速させることが、一層求められそうだ。

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【用語解説】気象予報士制度

 気象業務法の改正に伴い、平成6年度に導入された。社会に混乱を起こさないよう、気象庁から提供される数値予報資料など高度な予測データを適切に利用できる技術者の確保を目的に創設された。気象予報士になるためには、気象業務支援センターが実施する気象予報士試験に合格し、気象庁長官の登録を受ける必要がある。試験は年2回実施し、合格率は約5%程度とされ、難関だ。