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「不安煽らぬよう備える」半島有事に備え、九州・山口の自治体の悩み

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「不安煽らぬよう備える」半島有事に備え、九州・山口の自治体の悩み

 トランプ米大統領が、北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定するなど、朝鮮半島の緊張が一層、高まっている。九州・山口の自治体は有事を想定し、住民避難や難民対応など備えを急いでいる。

 「国境の島として、有事に備えた事前対策や応急対策の必要性を再認識している」

 長崎県対馬市の比田勝尚喜市長は9月の定例市議会で、こう答弁した。

 対馬市から半島まで最短で約50キロしかない。気象条件が良ければ、半島南岸を目視することもできる。それだけに危機感は強い。

 対馬市国民保護計画では、「武力攻撃事態等への対処」に多くのページを割く。

 その中では、多数の死傷者が発生したり、建造物が破壊されるなどの具体的な被害が発生した場合、原因が明らかになっていない段階でも、住民の生命、身体および財産の保護のために、初動対処が必要となると、強調する。

 具体的には、市の部署ごとに、情報の収集・提供、避難所の運営、死体の埋葬など取り組むべき事項を列記した。離島だけに、情報通信手段の確保も重視した。化学防護服や放射線測定装置などの資材は、国が確保・備蓄すると記した。

 難民対策も想定する。

 比田勝氏は「防災用に備蓄する食料などを、提供する可能性もあるだろう。住民の不安を煽(あお)らないようにしながら、備えを着実に進めたい」と話した。

 『戦後対馬三十年史』(斉藤隼人著)によると、朝鮮戦争の勃発直後の1950年8月、対馬近海では、3日間で計78人が厳原海上保安部(現対馬海上保安部)などに検挙された。翌年6月には、地元の拘置所の収容者が116人に上り、定員95人を上回った。「所員は週末を返上する忙しさだった」とある。

 ◆役割明示を

 北九州市は「大量難民発生時のマニュアル」の精査を進める。市がマニュアルを策定したのは平成20年だった。その2年前には、北朝鮮が長距離弾道ミサイルの発射や、初とされる地下核実験を実施するなど、半島情勢が緊迫化していた。

 政府の国会答弁などによると、避難民の保護、身柄の確保、上陸手続、収容施設の設置運営-は国が担う。

 市町村には、その後の対応が求められる。北九州市のマニュアルによると、政府の要請に応じて、公共施設などを収容施設として指定する。また、近隣住民への情報提供も行う。

 市危機管理担当の徳光崇係長は「地域防災計画を応用する形で動く。食料や毛布の提供などは、同計画に基づいた被災者支援と同様のレベルの対応をすることになる」と話した。

 ただ、政府は具体的な被害想定や、対処方針は示していない。住民対応の最前線に立つ自治体は、不安を強め、いらだつ。

 九州市長会は10月17日、「地方都市における国民保護推進を要望する決議」を国に提出した。

 決議では、武力攻撃による災害対処に必要な資機材の確保や、地方自治体との役割を明示するよう、求めた。(村上智博)