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【もう一筆】山形 正直であれ、誠実であれ

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【もう一筆】
山形 正直であれ、誠実であれ

 山形県の金山町長を7期、参院議員を3期務めた岸宏一氏が亡くなった。11月4日の合同葬には約1400人が参列し、早過ぎる死を惜しんだ。

 数ある業績の中でも岸氏を著名にしたのは町長時代に日本で初めて制定した情報公開条例だった。先進的な行政を目指す岸氏が、元学友のジャーナリスト、田岡俊次氏の勧めで導入した情報公開条例は「税金で運営される自治体の税金の使途を明らかにするのは当然」と考える岸氏の行政のあり方の基本を具現化したものだった。

 当時、国内に範とする事例がない中、情報公開に先進的な海外事例を取材した田岡氏が原案を作成。情報公開の対象は海外でも「施行日以降」とすることが多いが、「『施行日以前もできるだけ公開する』としたのは岸氏だった」と田岡氏は明かす。

 金山町の情報公開条例はその後、神奈川県、埼玉県へと広がり、国の情報公開法制定の後押しになっていく。人口わずか7千人余の東北の小さな町が開けた一穴は大きかった。

 情報公開条例は、「正直であれ、誠実であれ」をモットーにした岸氏の真骨頂でもあったのだろう。旧家生まれの岸氏が常に責務として担い、自身を支えてきたもの。それはまさに「ノブレス・オブリージュ(高貴さは義務を強制する)」。自分自身に課すものは何かを常に考える政治家だった。(柏崎幸三)