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【ZOOM東北】岩手発 ツキノワグマ狩猟開始日前倒し検討

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【ZOOM東北】
岩手発 ツキノワグマ狩猟開始日前倒し検討

 ■「怖さ」学習させ被害抑制

 岩手県は平成30年度からツキノワグマの狩猟開始日を現行の11月15日からニホンジカやイノシシと同じ11月1日に前倒しすることを検討している。ツキノワグマに人間の存在や怖さを改めて学習させ、28年度に17件19人を数えた人身被害、45・4ヘクタール、3467万円に及んだ農業被害を減らそうという狙いで、実現すれば東北6県で初めてとなる。(石田征広)

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 ◆実現すれば東北初

 ツキノワグマの狩猟開始日の前倒しは今年6月に開かれた県環境審議会自然・鳥獣部会で県猟友会の菅野範正専務理事が提案した。野生鳥獣の狩猟期間は国の鳥獣保護管理法で基本的には11月15日~翌年2月15日と定められている。東北6県は同法に準拠し、ツキノワグマの狩猟期間を11月15日~翌年2月15日としてきた。

 野生鳥獣の狩猟期間は都道府県の判断で変更することができる。急速な個体数増加と生息域拡大で農業被害が深刻なニホンジカやイノシシはその典型だ。国も平成35年までに半減させたい方針で、東北6県も秋田を除く5県が狩猟期間を延長しており、岩手はニホンジカ、イノシシとも最長の11月1日~翌年3月31日だ。

 菅野専務理事の提案はニホンジカやイノシシの狩猟現場で生息域が重複するツキノワグマと遭遇するケースが増えたことがきっかけだった。厄介なのは11月1~14日にツキノワグマと遭遇した場合。狩猟期間前のため発砲できず、何度か危険な場面があったという報告が県猟友会に届いていた。

 解禁直後だった昨年11月20日、ニホンジカの四方を取り囲み、追い込んでから仕留める巻狩でツキノワグマが突然現われ、狩猟者1人が負傷した例もあり、ツキノワグマの狩猟解禁前の11月1~14日の間、狩猟者の安全をどう確保するかが急務にもなっていた。

 しかし、狩猟開始日前倒しの本来の目的はツキノワグマによる人身被害の予防だ。菅野専務理事はいう。

 「最近は人間を恐れないクマが増えている。人身被害を予防するには人間の怖さを改めて学習させる必要がある。すべて獲るのではなく、クマを追って人間の声や銃声を聞かせれば、人間の怖さを知りクマも人里に下りてこなくなる。クマに学習させるには現在の狩猟期間は短すぎる」

 ◆専門家の同意も得る

 県内のツキノワグマの生息数は3400頭という。個体数管理を担う平成29年度ツキノワグマ管理検討委員会が10月24日に開かれ、狩猟開始日の半月前倒しが議題となった。ほとんどの委員が狩猟期間の前倒しがクマに警戒心を与え、人里への出没抑制につながるとして支持、実現に向けて大きく動き出した。

 ただし、県側の提案が11月15日~翌年2月15日を11月1日~翌年1月31日に前倒しする内容で、委員から11月1日~翌年2月15日に狩猟期間を実質的に延長する意見が多かった。狩猟期間を変更できるのは県環境審議会自然・鳥獣部会で、来年6月か9月に開かれる部会で最終決定する。

 県自然保護課の小笠原誠総括課長は「狩猟期間の前倒しにはほとんどの専門家に同意をいただいている。関係機関と協議、調整を進めたい」としている。

 お隣の秋田は11年続いたツキノワグマの狩猟自粛を解除した。クマによる死者が出て不安が広がる県民感情に配慮したためだった。岩手の狩猟開始日の半月前倒しを含め、ツキノワグマの人身被害や農業被害を抑制するため、狩猟が個体数管理に果たす役割がいよいよ重要になってきた。