産経ニュース

戦艦「比叡」探索のNPO法人「日本人としてのけじめ」 山口

地方 地方

記事詳細

更新


戦艦「比叡」探索のNPO法人「日本人としてのけじめ」 山口

 さきの大戦中、南太平洋ソロモン海に沈んだ戦艦「比叡」の探索に、NPO法人のアジア太平洋英霊顕彰会(東京)のメンバーが11日、出発する。同会副理事長で水中探査会社社長の池田克彦氏(71)は「日本人としてきちんとけじめをつけたい」との一心で、NPO設立前から沈没船調査や遺骨収集に取り組んできた。(大森貴弘)

 池田氏は陸上自衛隊などを経て、平成13年に水中探査会社アーク・ジオ・サポートを創業した。事業を手がけるうち、旧海軍の戦艦「陸奥」にまつわる話を聞いた。陸奥は山口県・柱島沖で沈んだが、正確な沈没地点や、現在の様子が全く分かっていなかった。

 昭和40年代、深田サルベージ(現深田サルベージ建設)が難作業の末、砲塔や船体の4分の3を引き揚げた。だがその後、ほぼ手つかずだった。

 「瀬戸内海という目の前に沈んでいるのに、何も分からないのはあんまりだ」

 戦後60年の平成17年夏、社を挙げて探索を実施した。マルチビームソナーを使い、水深40メートルの海底に横たわる船体を、鮮明な画像で表すことに成功した。

 池田氏らに続いて、海上保安庁も再調査した。それが正確な沈没地点や3次元画像の公開につながった。池田氏はその後も、ガダルカナル島など海外の激戦地への慰霊訪問を続けた。

                × × ×

 平成24年、連合艦隊の根拠地だったトラック諸島を訪れ、衝撃を受けた。

 ダイビングスポットとして、沈没船や遺骨が欧米人ら観光客の“見せ物”にされていた。

 「戦死者はみな、私の父と同じ世代です。遊び場にされるのは耐えられなかった」

 すぐに動いた。25年までに海底探査をし、潜水艦や輸送船など33カ所の沈没位置を特定した。

 「陸奥の経験がなければ、やろうと思わなかったでしょう。正確な沈没地点が分かれば、慰霊もできる。陸奥に背中を押されました」

 戦没船の位置の特定や慰霊などに取り組もう-。志を同じくする知人らを集め、28年にNPO法人アジア太平洋英霊顕彰会を設立した。理事長には、海上自衛隊OBで弁護士の水津正臣氏(73)に就いてもらった。

                × × ×

 会として今年1月、ミャンマー北西部を訪れた。インパール作戦で命を落とした兵士らの遺骨収集に向けた調査をした。

 続く活動が比叡の探索だった。

 水深1千メートルの海底を探索できるマルチビームソナーを、会社で購入した。費用は最低でも1千万円必要とみられる。寄付も募った。九州工業大の浦環特別教授も協力する。

 比叡が沈む海域は水深が約500メートルある。池田氏は「船の速度や波、ソナーの角度など、条件が少しでも違えば見つからない。船体が折れて、長さが資料と合わなくなっているかもしれない。何とか見つけてきちんと慰霊の場を示したい」と語った。

                   ◇

 ■アジア太平洋英霊顕彰会・水津正臣理事長、来年は慰霊祭を

 平成28年3月「戦没者の遺骨収集の推進に関する法律」が成立し、36年度までが遺骨収集施策の集中実施期間とされています。陸上の遺骨収集には、既存の団体が複数あり、情報を政府に提供しています。海を主体にした団体はなかったので、このNPO法人が設立されました。

 ほとんどの戦没船は、詳細な沈没位置が分からず、英霊も放置されています。トラック島のように、遺骨が海外のダイバーにもてあそばれている状況もあります。厚生労働省から遺骨収集事業の対象になり得るとの見解も引き出しました。

 今回、調査対象に比叡を選んだのは、戦時中に海外で沈んだ日本戦艦で唯一、沈没位置が分からないからです。今回の調査で正確な位置を探し出し、来年は関係者とともに海上で、戦死者188人の、慰霊祭を営みたいと考えています。(談)