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【矢ヶ部大輔の一筆両断】メディアと主権者教育

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【矢ヶ部大輔の一筆両断】
メディアと主権者教育

 衆議院が解散され、瞬く間に新党設立や再編などの動きがありました。22日に実施される衆議院議員選挙の行方、その後の政治情勢も読みづらい状況となりました。1カ月前には予測すらできなかったことで、政治の世界のダイナミズムを実感するところです。教育現場との関係でいえば、平成28年7月の第24回参議院議員選挙が選挙権年齢が満18歳以上に引き下げられて初の国政選挙であり、今回は初めての解散・衆院選となります。主権者教育は年間の指導計画に位置づけられるべきものとはいえ、学校現場においても再度、非常に神経を使うところではないかと推察します。

 20代など若い世代の投票率の低さが以前より問題とされ、若者の政治参加が重要な課題となっていました。前回の参院選は10代の投票率が46・78%、特に18歳の投票率が51・28%でした。今回それ以上の投票率となるために、まずは自己の投ずる一票にわが国の将来がかかっているのだという自覚を持たせ、投票行動を促したいものです。

 公職選挙法など教職員も含め、法令違反が生じないようにすることは言うまでもありませんが、前回よりも一歩踏み込んだ主権者教育を進めるために、各党は、目指すべき国家像を、若者にもわかりやすく示してほしいものだと思います。特に衆議院選挙は政権選択選挙とも言われています。北朝鮮のミサイル・核開発など目の前に迫った隣国の脅威に対して国家としていかに対処するか、人口減少が進む中で今後の社会保障をどうするのかなど、財源の配分も含め現実的な問題に対し、論争を闘わせてほしいと思います。また、政治家の不祥事が続々と報じられましたが、政策論争とともに政治家を人間として見抜く目も、必要です。政治の世界ですので、ある種の権力闘争や政権をとるための熾烈(しれつ)さもあって当然なのですが、メディアにはバランスのとれた報道を望みたいと思います。また、学校においてはできるだけ多角的に情報を収集することを指導すべきだと考えます。

 ここから個人的な考えとなりますが、メディアの報じ方に大いなる疑問を持っています。テレビのワイドショーなどで繰り返し流される森友学園や加計学園の問題についてです。政権を批判することはもちろん必要ですし、政権側にも十分な説明責任があるでしょう。しかし、安倍首相に対する“疑惑”に関しては、視聴者として問題の本質が一向に見えてこないのです。加計学園の問題は要するに規制緩和をめぐる省庁間や、その背後にある関係団体の駆け引きにその本質があったかと思うのですが、なかなかそういった側面から問題が掘り下げられることはなかったように思います。新聞社には各社の主張があっていいし、「報道しない自由」もあるとのことです。とはいえ、国会中審査で参考人として出席した加戸守行・前愛媛県知事の、鳥インフルエンザの対策のために獣医学部の新設をかなり前から要請していた事実などは、十分に報じていない新聞もあります。これでは単なる政権倒しのための「政治運動体」とみられても、しかたがないのではないでしょうか。

 主権者教育においてメディアリテラシーは今後、決定的に重要になるのではないかと思います。というのも学校ですべての政治情勢に関する情報を与えるのは不可能だからです。教師側は偏りのない情報を提示するとともに、自己の特定の意見を述べることは抑制しなければなりません。国難と言われる今、子供たちが不透明な時代を生き抜く力を身に付けるためには、あらゆる情報を基に自らの頭で考える思考力や判断力が求められます。

 そして、わが国が持続可能な国家として存続するために、その中で個人が輝く社会とするためには、日本人の歴史観や道徳観を踏まえて「国家存立のための基盤とは何か」を深く考えることが重要であり、そこにこそ、主権者教育の本質があるのだと考えています。

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【プロフィル】矢ヶ部大輔

 やかべ・だいすけ 昭和43年福岡県柳川市生まれ。福岡県立伝習館高校、広島大学文学部卒。平成3年度から福岡県立高校英語科教諭。三池高校、伝習館高校などで勤務。24年度から福岡教育連盟執行委員長。