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シカ食害、高山帯に拡大 山梨県調査 景観破壊や災害リスクも

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シカ食害、高山帯に拡大 山梨県調査 景観破壊や災害リスクも

 シカの食害が標高2千メートル以上の山岳地帯に広がり、植生や景観を破壊している。県森林総合研究所(富士川町最勝寺)が南アルプスの北岳(3193メートル)周辺を調査して明らかになった。食害を減らすために高山帯(2500メートル以上)よりも低域で行っている駆除を避け、シカが逃避したためだという。高山帯での駆除は容易ではなく、国や県は高山植物を保護する防護柵の設置を進めている。 

 同研究所は県内を約210区画に分轄して調査し、1平方キロメートル当たりのシカの頭数を推計している。北岳周辺は平成17年以降、1~5頭となっている。

 同研究所の長池卓男主幹研究員は「この10年間に北岳の中心部から半径約5キロ圏内で頭数が増えている」と指摘。「高山植物が食べられたり、踏みつけられたりして植生が破壊され、土壌が露出しているところも出てきた」と食害の進行を懸念する。だが、高山帯でのシカの駆除は難しい。ハンターの登山や変わりやすい天候など、制約が多い。

 降雪期の冬に、1千メートル台の低山帯に降りてくるシカの駆除も試みたが、降りてこないシカがいることも判明し、食害抑制の効果はなかったという。

 しかも、北岳周辺の食害の発生場所は虫食い状態で点在しているという。長池氏は「今後、点がつながって面に広がると、景観や植生の破壊だけでなく、土砂崩壊など災害リスクも出てくる」と警告する。

 北岳では現在、環境省が主導し、3カ所に防護柵を設置した。このうち2カ所は各約1ヘクタール、1カ所は約200平方メートルで、「植生の回復で成果を上げている」(長池氏)という。ただ、これまでの調査地点は登山道から立ち入れる場所に限定され、食害の全体像は必ずしも把握できていない。来年度は小型無人機ドローンによる調査も計画している。

 長池氏は食害対策について、「行政や研究機関だけでは対応しきれない。県が植生の保護計画を策定し、NPOが実行部隊となるなど民間の協力も必要だ」と指摘する。