産経ニュース

太陽光バブルで需給に乱れ 揚水発電稼働が急増

地方 地方

記事詳細

更新


太陽光バブルで需給に乱れ 揚水発電稼働が急増

 太陽光発電の黒光りするパネルが、電力の安定供給に深刻な影を落とす。太陽光バブルが起きた九州では、昼間の「供給過多」による大規模停電(ブラックアウト)の危険性さえ、生じている。九州電力は、蓄電池の役割を果たす揚水発電の稼働などで対応するが、需給の調整幅が小さい離島では、限界も見えてきた。 (中村雅和)

 宮崎市から北へ車で1時間ほど。緑豊かな山中に小丸川揚水発電所(宮崎県木城町)がある。近づくと、シャッターで閉ざされた巨大なトンネルが見える。地下約400メートルにある発電施設への入り口だ。

 揚水発電の仕組みは、水力発電と同じだ。ダムにためた水を、必要に応じて流し、発電タービンを回す。

 ただ、水のため方が違う。揚水発電は電気を使ってポンプを動かし、下部にある調整池から、上部のダムに水をくみ上げる。

 電力が供給過多のときに、余った電気を使って水をくみ上げ、供給不足のときに落として発電する。いわば電気を、水としてためている。

 小丸川発電所は、平成19年に運転を開始した。上部のダム(貯水容量560万立方メートル)から落水し、出力約120万キロワットで約7時間、連続発電できる。

 発電施設は高さ約50メートル、幅約25メートル、奥行き約190メートルという巨大な地下空間にある。4台の発電機と、水をくみ上げる最新鋭のポンプ水車が置かれる。

 ポンプ水車は起動から10分でフル出力に達し、毎分600回転する。回転速度はきめ細かく調整できる。

 九電水力センターの土持久幸揚水工事グループ長は「運転時には航空機のエンジンのような轟音(ごうおん)が響く。揚水発電の重要性は増している」と語った。

 ◆GWの危機

 揚水発電は、需要が少ない夜間に水をくみ上げ、日中の需要ピーク時に落水させ、電力を賄ってきた。

 しかし24年7月、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)が始まると、様相が変化した。

 太陽光バブルが発生し、九州のあらゆる所にパネルが設置された。この結果、昼間の発電量が急増した。半面、需要は増えない。

 著しい供給過多となれば、周波数や電圧が乱れる。そうなれば、発送電施設が損傷し、大規模停電を引き起こす可能性もある。

 九電は、昼間の過剰電力を、揚水発電で吸収するようになった。

 24年は66回だった日中(午前8時~午後5時)のくみ上げ回数は、28年に969回にまで達した。27年以降、日中のくみ上げ回数は夜間を上回り続ける。

 特に需要規模が小さい春や秋は、過剰電力が問題となる。大型連休中の今年4月30日、九電は需給バランスが崩れかねない危機に直面した。

 午後1時、約770万キロワットの需要に対し、太陽光発電による出力が約565万キロワットと7割を超えた。

 小丸川をはじめ、九電は3カ所ある揚水発電所のポンプをフル稼働させ、電力を吸収した。

 ところが夕方になると、太陽光の発電量が急落した。1時間で130万キロワットも落ち、供給不足の局面となった。九電は火力発電の出力増に加え、小丸川など揚水発電所で、水を落として発電に切り替えた。

 電力の需給の乱れが、表面化することはなかった。だが、バランスを取る作業は、綱渡りが続く。

 ◆出力抑制を要請

 離島の状況は、さらに悪い。

 「出力調整の頻度が、近年急速に高くなった。支障が出ないよう、設備の保守管理を強化している」。九電新壱岐発電所の藤元安彦所長はこう強調した。

 約2万7千人が暮らす壱岐島は、九州本土の送電網から独立している。島内の電力は、島東部にあるディーゼル発電所が担ってきた。太陽光が出力過多となる昼間は、安定供給の確保に、ディーゼル発電所の稼働率を下げる。

 だが、システムへの負荷を考慮すると、稼働率を50%以下にすることはできない。出力変動が激しいと発電設備のトラブルも起こりやすいという。調整には限界がある。

 離島で発電所が損傷すれば、復旧には、本土よりも時間がかかる。FITによる太陽光バブルは、島民の生活、そして生命を脅かす恐れさえ持つ。

 九電は平成27年5月以降、壱岐島をはじめ、鹿児島県の種子島と徳之島で、太陽光発電事業者に出力制限を要請した。