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【みちのく会社訪問】浄法寺漆産業(盛岡市) 国産漆の新たな可能性追求 

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【みちのく会社訪問】
浄法寺漆産業(盛岡市) 国産漆の新たな可能性追求 

 岩手県が生産量日本一を誇る国産漆の新しい可能性を追求しているのが浄法寺漆産業だ。元岩手県職員の松沢卓生社長(45)が8年前に起業した。

 漆は全くの門外漢だった松沢社長と漆の出会いは平成17年。県の人事異動で、本庁の事務方から二戸地方振興局(現・県北広域振興局)の林務部に配属され、地場産業の漆と木炭の振興を担当した。

 振興局管内の二戸市浄法寺は県内のすべての漆を産出する全国一の産地だった。4年間、需要の低迷や後継者不足に悩む漆産業の振興に携わり、「漆を盛り上げたいという思いからだった」という。

 手始めに漆の精製を手がけた。浄法寺漆の付加価値を高めるためだ。それまで県内に漆を精製する会社はなく、掻き取ったままで不純物が混ざった粗味(あらみ)漆を樽(たる)詰めにして出荷するだけだった。

 粗味漆を濾過(ろか)して不純物を除去し、攪拌(かくはん)して精製した漆の値段は2倍になる。これをプラスチックチューブに詰めた。「従来のアルミは中に漆が残る。プラスチックは使いやすく、中に残らないから」(松沢社長)。200グラム入り(約2万円)~5グラム入り(約1千円)まで6種類を販売。グッドデザイン賞も獲得した。

 純国産漆ネームプレート(赤黒2色、8千円~)、二段の杯付きの角杯セット(3万5千円)、浄法寺漆のそば打ちセット(9万円)のほか、漆の里はちみつ(140グラム、1300円)も販売。トヨタ東日本の記念イベントではアクアのバンパーを漆塗りにした。

 「TRAIN SUITE 四季島」(JR東日本)の内装に使われた100枚のアルミ板に黒漆を施した。東経連ビジネスセンターの支援で、漆を車の内装にも使えるよう、県工業技術センターと内装の樹脂と漆の密着性を高める研究をするなど、新商品の展開にも積極的に挑戦している。

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 ■国内最高品質目指したい 松沢卓生社長(45)

 --安定した県職員の身分を捨てて起業することに反対は

 「やりたいことを見つけたということで家族も賛成してくれました。起業する半年前から事業計画を作成して、家族はもちろん県の上司にも示していましたから」

 --文部科学省が平成27年に国宝と重文の修理修復は耐久性に優れた国産漆を原則使うよう通達、需要が高まってますね

 「ところが、生産量が全然足りないんです。文科省は年間2・2トン必要としてますが、国産漆の生産量は年間約1・2トン、その7割近くの浄法寺漆が年間約900キロ(28年)。ですから、県内で苗木の植樹を進めています」

 --樹脂と漆の密着性向上の研究は進んでいますか

 「樹脂に特殊な前処理をすることで漆の密着性が高められることが分かってきました。高級車向けですが、将来はこの分野にぜひとも進出したいですね」

 --将来の目標は

 「当社が扱っている浄法寺漆は年間50~60キロ。かつては10倍もあった中国産と国産の値段の差は中国産の値上がりで5倍に縮まってきました。漆掻きは重労働でもっと付加価値がついてもおかしくない。縄文時代から続く漆の伝統を守り、かつてのように岩手全域に漆の木を増やし、国内最高品質の漆をつくって、岩手が漆のスタンダードになることを目指したい。当社としても、将来は1トンの浄法寺漆を扱い、文化財の修復をはじめいろいろな分野に挑戦したい」(石田征広)

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 ■企業データ 盛岡市本町通3の6の1。平成21年起業、23年に株式会社となった。資本金300万円、従業員3人。漆の精製及び販売、漆製品と工芸品の企画、製作、販売及びコンサルティング。(電)019・656・7829。FAX019・903・0437。http://japanjobouji.com。