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【突破力 地方創生を担う企業】エストラスト(本社・山口県下関市)

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【突破力 地方創生を担う企業】
エストラスト(本社・山口県下関市)

 ■資本力高めて総合デベロッパーへ

 山口県下関市に本社を置く数少ない、東証1部上場企業だ。今年2月、株式公開買い付け(TOB)によって、西部ガスの子会社になった。上場は維持されるが、常勤役員を1人、受け入れることになった。

 「創業者である私のことだけを考えたら、自由度は下がったかもしれません。でも、会社にとっては間違いなくプラスです。資金力や知名度のアップによって、これまで無理だった事業にも取り組める」

 笹原友也社長(49)は、こう力を込めた。

 平成11年の創業以来、着実に実績を積み上げた。

 主力事業は「オーヴィジョン」ブランドの分譲マンションの企画・販売だ。九州・山口を中心に累計約80棟、4千戸を売った。ここ数年は、年間400~500戸を販売する。

 山口県内の供給戸数は、4年連続で首位を獲得し、市場の4分の1以上(平成28年)を占める。

 だが、少子高齢化と人口減少で、市場規模は縮小する。小さくなるパイを食い合う時代となった。

 笹原氏によると「首都圏で数百億~数千億円を売り上げる業者が、人口増が続く福岡都市圏に続々と進出している」という。

 地場デベロッパーとして勝ち抜くために、選んだ道が西部ガスグループ入りだった。資本力の増強に加え、九州での事業拡大の布石といえる。

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 笹原氏は20歳で、下関市内の不動産会社に入社した。26歳で別の会社に移り、そこで新規事業として、分譲マンションの企画・販売に携わった。

 「見よう見まねでした。大手業者の施工現場に足を運んだり、パンフレットを入手してキャッチーな表現を学んだり。ほぼ一人で事業を軌道に乗せました」

 11年、30歳で独立した。社名の「エストラスト」は、「下関」「スタンダード」「サプライ」の「S」に、「トラスト」(信頼)の意味を込めた。

 とはいえ、ビジネスの世界で30歳の若者に「信頼」があるはずもない。マンション建設に必要な億単位の融資は、なかなか受けられなかった。

 当座の資金を稼がなければならない。笹原氏は、北九州市のハウスメーカー、岡部産業に飛び入り営業した。

 販売代理を任されると“在庫”の物件を、半年で約50戸、10億円分売った。

 同社から信頼と資金を獲得し、「オーヴィジョン」ブランドのマンションが生まれた。12年だった。感謝の意を込め、岡部産業の頭文字「O」を、ブランド名前に含めたという。

 15年、完全自社物件の分譲を始めた。

 「期日までに売れなかったら、借金も返せないし建設費も払えない。毎晩うなされて、妻にたたき起こされていました」。こう振り返った。

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 オーヴィジョンシリーズには、他社に先駆けてオール電化システムを採用した。また、長寿命化住宅にも取り組んだ。

 「安かろう悪かろうという商品は作りません。環境配慮型をキーワードに、良いものをより長く使ってもらう。それにはコストは膨らんでも外せないスペックはある。これを続けて、ブランドを浸透させた」

 26年に売上高100億円を突破し、東証1部に上場した。今では、うなされることもなくなった。

 西部ガスの傘下入りで、オール電化の物件がガスに切り替えられる-との見方もある。笹原氏は「あくまで入居者が1番。だから、ガス一辺倒にはならない。そこは譲れない」と強調する。

 今後は、事業領域を広げ「総合不動産デベロッパー」を目指す。重点エリアはもちろん、九州だ。

 マンションに加え、山口県内では戸建て住宅の販売を始めた。ノウハウを蓄積した上で、早期に九州でも開始するという。また、ホテル事業への参入も検討する。

 多角化により、売上高を現在の137億円から、10年以内に300億円とする目標を掲げる。

 笹原氏は「マンション分譲は一つの失敗も許されない。百戦百勝が義務づけられる。そんな会社になるための歩みを止めない」と語った。

  (大森貴弘)