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【かながわ美の手帖】横須賀美術館「美術でめぐる日本の海」

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【かながわ美の手帖】
横須賀美術館「美術でめぐる日本の海」

 ■大漁旗や浮世絵が示す海と生きる日本人の姿

 海に囲まれながら人々が暮らし、文化を発展させてきた日本。海は古くから芸術家の創作テーマにもなってきた。海や海辺の生活にまつわる美術品など約100点を集めた企画展「美術でめぐる日本の海」が横須賀美術館で開かれている。過去から今に続く日本人と海との深い関わりを、浮世絵や絵画、写真、大漁旗、玩具などの展示品から感じることができる。

 ◆命がけのクジラ漁

 赤、青、金などの色を使ったカラフルな大漁旗が、同館の壁や天井を埋めている。船名や祝いの文言とともに鯛や鶴亀、七福神など縁起のいい絵柄が描かれている。これらの大漁旗は戦前・戦後から現在までの間に作られたものだという。

 大漁旗は単なる飾りではなかった。岸に着いてから陸揚げの人員を集めていては魚の鮮度が落ちるため、沖から陸に大漁を知らせる役割があった。目立つ必要と、大漁の喜びが相まって、大漁旗は次第に派手な絵柄になっていった。

 会場には明治~昭和期の「万祝(まいわい)」とよばれる祝い着も飾られている。大漁を記念して網元が漁師や家族らに配ったものだ。千葉発祥の風習で、青森から静岡にかけて太平洋沿岸の漁村で広まったという。

 日本の捕鯨文化を描いた絵画は多い。江戸時代後期の「玄界灘沖鯨漁之図」は、何隻もの漁船が沖へ繰り出し、クジラを取り囲む様子が描かれている。

 歌川国芳の版画「~鯨をとる図」では、仕留めたクジラを巨大な木製ろくろ(人力のウインチ)を使って陸に引き寄せている。背に乗って皮をはぐ者、肉を運ぶ者など、登場人物はみな喜々としている。

 主任学芸員の日野原清水は「『鯨一匹捕れば七浦潤う』といわれ、鯨の捕獲は大きな経済効果をもたらした」と解説する。

 クジラ漁は海上で背に飛び乗るなど危険度が高い。捕鯨に関する品々からは、リスクとリターンの大きさに対する人々の熱い思いが伝わってくる。木製玩具も作られ、日本人がクジラを食材としてみていただけでなく、感謝や愛着を持って接していたことが伺える。

 ◆かつての風景

 過去の海辺の暮らしを読み取ることができる作品として、明治時代の前期に中島仰山が描いた「水産博覧会」がある。水産業振興のための見本市を紹介するポスターだ。

 天日干しによる製塩や底引き網、ノリの養殖などの様子が描かれている。

 明治生まれの洋画家、牛島憲之の絵画「貝焼場(午後)」は、海辺で貝を焼いて石灰を作る様子だ。窯から立ち上がる煙の匂いがしてきそうな、ほのぼのとした雰囲気。戦前、貝殻が採れる海辺でよく見られた光景という。

 日野原は「海との共生は島国日本の文化そのもの。海にまつわる展示物を通じて、海とのかかわりを改めて感じていただきたい」と話している。=敬称略(外崎晃彦)

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 企画展「美術でめぐる日本の海」は横須賀美術館(横須賀市鴨居4の1)で27日まで。入館は午前10時から午後6時。観覧料は一般900円ほか。期間中、展示替えあり。問い合わせは同館(電)046・845・1211。