産経ニュース

【想う】「復興役立ちたい」千葉から福島へ 料理店起業、住民交流の場に

地方 地方

記事詳細

更新

【想う】
「復興役立ちたい」千葉から福島へ 料理店起業、住民交流の場に

 東京電力福島第1原発事故の被災地、福島県楢葉町に2日、小料理店をオープンした。千葉県の出身。福島県には地縁も血縁もなかった。

 「東京都のハウスメーカーで働いていました。そこに震災が発生。人の暮らしが簡単に壊れるさまを目の当たりにし、建築、生活環境分野で復興に役立ちたいと思いました」

 夜間学校で2年間建築を学び直す。復興人材の育成塾に入り、福島県に通い始めた。

 「郡山市の設計事務所に勤めました。やりがいはありましたが、仕事は公共施設の設計が主体。自分としては原発事故の避難者が帰りやすい住環境をどう整えるかという民間レベルの仕事をしたかったのでジレンマがありました」

 事務所勤務の傍ら、楢葉町で古民家を借りて住民の交流を促す活動に加わる。

 「活動を通じ、もともとの住民と除染、廃炉作業員ら新住民の関係がしっくりいっていない現実を知りました。作業員は地元の復興に貢献してくれているのに『流れ者』という負のイメージを抱かれ、疎外感を味わっていました。これは住環境の改善よりも先に取り組まなければならないことがあると感じました」

 「何人かの作業員に『何があれば疎外感が和らぎますか』と聞いたら『飲みながら話ができる場が欲しい』という答えが返ってきました。楢葉町は復興途中でお酒の飲める店が1軒しかなく、『なら自分で開こう』と一念発起して店を出しました」

 東北の女性起業家を支援する通信販売会社の助成金を得て、古民家近くの空き店舗を借りて開店にこぎ着けた。場所は町の中心から離れ、立地条件はいいとは言えない。

 「古民家活動があっての起業だったので、古民家のそばから離れる気はありませんでした。周りに作業員宿舎が多く、作業員を主な客層にする営業方針に合っています」

 お薦めの品はナスの揚げ浸し、ゴーヤのツナサラダ、鳥の甘辛煮、サバの味噌(みそ)煮など。

 「野菜は古民家の畑で採れた物です。料理の心得はありませんでしたが、地元のおばあちゃんの手ほどきを受け、格好がつきました」

 町は原発事故の避難指示が解除されて2年近くになる。それでも帰還者は人口の2割程度の1700人にとどまる。

 「町を元通りにするのは難しいでしょう。新しい町を一からつくり直す展望を持つ方がいいと思います」

 店は旧住民と新住民の関係を滑らかにする緩衝材の役目を担いたいと言う。

 「顔の見える交流の場を提供し、笑い合える地域となるお手伝いをしたい」

 その思いを込めて店の名を「結(ゆい)のはじまり」と名付けた。(伊藤寿行)

 

【プロフィル】古谷かおりさん(33)

 ふるや・かおり 千葉県佐倉市生まれ。店の住所は楢葉町山田岡。25日まで予約制で営業する。営業時間は午後5~10時。月、火曜日定休。楢葉町内とお隣りの富岡、広野町内なら送迎あり。(電)080・3325・2131。