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【直撃!体験!ちばの現場】小湊鉄道「オトナの夜トロッコ」

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【直撃!体験!ちばの現場】
小湊鉄道「オトナの夜トロッコ」

 ■里山の臨場感、ゆったりビール

 プレミアムフライデーの夜、プチ・トラベル気分が味わえる「オトナの夜トロッコ」。小湊鉄道(市原市)が運行するビアガーデン風トレインだ。運行ひと月前から予約できるが、数日で満員となる人気振り。千葉の新ナイトスポットと聞けば、旅情をかき立てられたい記者として乗らぬ手はない。指折り数えて解禁日を待ち電話予約に成功。6月30日夕、始発駅の五井駅に立った。(菊池一郎)

 かつて運行されたSLの姿を復元、クリーンディーゼル搭載の現代版機関車が客車を引き、里山を縫うように走るトロッコ列車。月の最終金曜夕方限定で、千葉市に近い五井~上総牛久駅間約16キロの行程を往復させる。それがオトナの夜トロッコ。2時間半、ビールなど飲み放題サービスが楽しめるナイトツアーだ。

 午後6時14分、五井駅3番線に機関車入線。“鉄男”じゃないが、ホームから思わず身を乗り出しカメラを向ける。「お下がり下さい。フラッシュの使用はご遠慮下さい」と駅員さん。分かっちゃいるけど…。

 6時35分発。ディーゼル独特の唸るような音と振動を感じると、列車はホームを滑り出す。昼過ぎまでの曇り空が嘘のように夕陽も顔を覗かせた。4両の客車のうち窓ガラスのない2両の「展望車」に陣取る80人の乗客は、沿線の道行く人に手を振り修学旅行ムード。小湊鉄道従業員や、沿線の飲食店経営者らでつくる「いちはら うまいもの会」メンバーが生ビールを配ってくれる。キタ~!

 ◆酔客の笑い声

 出発から10分、車内は早くも酔客の笑い声に包まれる。座席上の「おつまみ弁当」を開けると海老チリほか中華11種類が並ぶ。生ビール2杯でのどを潤した勢いで、うまいもの会の人に聞いてしまった。「飲み放題、元取れます?」。答えは「出血サービス」。「地元・市原でできることを皆でやる。それがウィン・ウィンに繋がる」と侠気(おとこぎ)を見せる中村雅人会長(67)。

 時速25キロ、ゴトゴトと車体を左右に揺らし、列車は夕闇迫る里山を抜ける。列車をプロデュースしたデザイナーの三宅正芳さん(55)は「時間短縮や経済効率性ばかり追求しがちな現代だから、里山の臨場感を味わい、ゆったりできるように考えた」と語る。

 ◆揺れに身を委ね

 「ローカル感ある揺れに身を委ねるのがいい。酒の味も倍増する」と浦安市の会社社長、篠田一志さん(55)。宵闇が濃さ増す車外。車内は大衆酒場状態。ビール、缶酎ハイ、日本酒と皆さん、ピッチが早くないか…。さいたま市の会社員、鈴木香奈子さん(30)は「手作り感がいい。車内から沿線の人に手を振るなんて、都心じゃできない」と小さな旅を満喫。同僚2人も「景色を見ながらビアホール気分を味わえ、心の洗濯」と満足気だ。

 折り返しの上総牛久駅に7時20分着。列車の向きの反転に、トイレ休憩も兼ねて40分停車。空を仰げば上弦の朧月。「夏は夜」か。そして復路。8時過ぎ、上総山田駅で停車。何事? ホームに、な、何とトランプ大統領! マスクを被った“プレジデント”が乗り込み「シェイクハンド」。更に、進行方向右に打上げ花火。復路は小湊鉄道のお・も・て・な・しのオンパレードで8時50分五井駅着。紅い顔がまたぞろホームを後にする。酒情?と旅情溢れる、これぞオトナ心の旅路、千葉編でした。