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【ZOOM東北】秋田発 人里近くで相次ぐ熊の目撃、被害…

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【ZOOM東北】
秋田発 人里近くで相次ぐ熊の目撃、被害…

 今年も北東北で熊による被害が続いている。特に秋田県内では人里近くでの目撃が増えているのが特徴だ。横手市の観光名所、横手公園では罠(わな)にかかった熊2頭が駆除された。人を恐れ、ドングリやタケノコが好物だったはずの熊が人里に慣れ、熊除けの鈴も「効果がない」との見方がある。一体、熊にどんな変化が起きているのか。(藤沢志穂子)

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 横手公園では6月に入り、熊のねぐららしき場所が2カ所見つかった。園内の広い範囲を立ち入り禁止としたところ、17日には捕獲用のオリで2頭がとらえられた。北秋田市の国指定史跡、伊勢堂岱(いせどうたい)遺跡でも熊が出没し、18日から見学禁止となった。

 秋田市郊外では6月8日、家の外壁が壊されているのが見つかった。外壁と内壁の間に蜂の巣があり、熊がハチミツを狙って壊したらしい。鹿角市の山林では放牧されていた子牛1頭(40万円相当)が、大館市の養鶏用ビニールハウスでも飼育中の比内地鶏350羽(70万円相当)が、いずれも襲われて死んだ。熊による被害とみられる。

 県内では5月末、仙北市田沢湖玉川の山中で女性(61)が襲われて死亡。熊の大好物でもあるタケノコ取りの最中に襲われた。

 昨年、鹿角市で4人が死亡したケースも似た状況。「タケノコ取りでの被害は自己責任」(県議)との冷めた見方もある中で、「観光地や学校付近で被害が出たら大変」(同)との懸念が広がっている。そこで県は公園や学校の近くに、被害を防ぐ電気柵設置の検討作業に着手した。

 ◆生息数が増加?

 果たして熊は増えているのか。県警によると、県内の熊の目撃情報は382件441頭(6月27日現在)で、昨年同期(373件408頭)のペースを上回る。山林近くや公道での情報が多いほか、ゴルフ場でも相当数が目撃されている模様だが、「風評被害を恐れて通報しない傾向がある」(利用者)といい、実際はさらに増えそうだ。

 さらに、1千頭前後とされてきた県内の生息数が、実際には「2千~5千頭と推定される」(秋田県立大の星崎和彦准教授)との見方もある。一昨年は熊の餌となるブナの実が豊作で、昨年生まれた子熊の多くが生き残った。その子熊が独り立ちするのが今夏で、生息数は増えている可能性が高いという。

 ◆ハンター不足と過疎化

 ハンター不足と、県内の過疎化が熊を人里に近づけている側面もある。

 県内の狩猟免許登録者は昭和49年のピーク時に8865人だったが、平成28年には1669人と5分の1に激減。高齢化に加え、免許維持にかかる費用が高く若い人が参入しにくい。そのため「『撃たれることはない』と熊が山中から下りてきている」(鹿角市の旅館経営者)というのだ。

 熊は雑食で果物やコメなど「人間の食べ物の味を覚えると持っている人を襲う」との指摘もある。過疎化で山林と人里の間にある中山間地域の耕作放棄地が増加し、放置されたリンゴなどの果樹が被害に遭ったとの報告例も多い。

 星崎准教授によると、熊は生きるためにタンパク質も必要とし、「花粉のタンパク質を求めて花も食べる。状況次第で動物も襲う習性はある」。人体については「動かない遺体となった後、土の中に埋めて少しずつ食べた例があった」(県自然保護課)という。

 ◆共存が喫緊の課題

 熊に遭遇したらどうすべきか。従来「熊除け」とされた鈴やラジオは人里に慣れた熊にはBGMのように聞こえ、「効かない可能性が高い」(星崎准教授)という。このため、JR東日本秋田支社では保線担当の職員に鈴に加えて防犯ベルを持たせるようになった。一方、星崎准教授は「人間が2人以上で大声で話せば、近寄って来ない」とも指摘する。

 熊と人間の共存は喫緊の課題。「熊の移動距離は鳥より長い。木の実を食べた熊が山頂で糞(ふん)を落とし、その中のタネが芽を出し大木となれば、温暖化など環境変化に樹木もうまく対応できる」と星崎准教授は言う。マタギによるツアーなど、観光資源化の方法を考えることも一案だ。