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佐賀県が鍋島直正公をラップでPR 異色PVが話題呼ぶ

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佐賀県が鍋島直正公をラップでPR 異色PVが話題呼ぶ

 佐賀県が新たに制作したプロモーションビデオ(PV)が好評だ。県が進める地方創生プロジェクト「サガプライズ!」の一環で、本格的なラップミュージックに乗せ、幕末日本の近代化をリードした佐賀藩の名君、鍋島直正(1815~1871)を顕彰する。明治維新150年に合わせ、若者向けに音楽で佐賀の歴史をPRしようと、関係者は奮闘する。

 《江戸後期の情勢直視

 欧米列強の現実に即し

 武器製造で高めた抑止

 軍事力強化務めた国士》

 佐賀県庁では昼休みが終わりに近付くと、重低音のリズムが庁内に響く。長さは4分45秒。韻を踏みながら流れるのは、佐賀藩の近代化を推進した10代藩主、直正をたたえた歌だ。

 「The SAGA Continues...」という楽曲で、佐賀県にゆかりがある4人の実力派ミュージシャンが制作した。

 人気ヒップホップグループ「キングギドラ」のメンバー、K(ケー)ダブシャインさんが引っ張る。明治維新後、鍋島家の茶畑があった東京・渋谷の松濤(しょうとう)地区で育った。

 佐賀藩出身の大隈重信が創立した早稲田大学のソウルミュージック研究会「GALAXY」出身、「KEN THE 390」さんら3人が加わった。

 4人は鍋島家に伝わる歴史資料を展示する博物館「徴古館(ちょうこかん)」(佐賀市)の学芸員から直正の人物像を学び、譜面に向かった。

 4人は直正が日本の近代化に果たした役割がいかに大きかったのかを歌詞にした。前半では直正が科学技術を振興し、西洋医学を導入したことを歌う。

 続けて、明治時代に鍋島家が東京の土地を買い上げ、茶畑として整備した逸話を軽やかにアピールする。最後は「故郷を愛し、本気で言う。ザ・サガ・コンティニューズ…」と結ぶ。佐賀の伝統が未来に向かって紡がれる、との思いを込めた。

 PVは、県広報広聴課の田中裕資主査が企画した。

 「佐賀には一生行くこともなさそうだといった残念なイメージを払拭したかった。ありきたりのPRでは他の自治体と変わりばえしないとの危機感もあり、ラップ調で、直正公を前面に出すことにしました」

 日本人DJが流すサウンドに、即興で言葉をぶつけ合うテレビの音楽番組が話題になっているのを思い出し、ヒントにした。

 田中氏らは歌詞にも曲の質にもこだわった。自治体や企業がPRに使う楽曲は一般に、明るい印象の作品が多いが、あえて暗いイメージで武骨さを強調した。映像もモノクロにした。まずは若者のラップ愛好者に的を絞り、じわじわと知名度を高める作戦だった。

 山口祥義知事も田中氏らのこの発想を評価した。

 「直正公は藩主になり、不安の中、初めて佐賀の地を踏んだ。私も両親は佐賀県人だが、実は、知事就任まで佐賀に住んだことがなかった。こんなリーダーとしての境遇は同じ。自然と直正公を意識しています」

 「KEN THE 390」さんは「自治体のPRでここまでやってよいのかと心配するほど、自由に作り込めた」と振り返る。

 動画投稿サイトのユーチューブでは3月の投稿後、再生回数は2万回を超えた。県には「行政らしくなく、面白い」と好意的なメッセージが寄せられた。県の狙いが当たった。

 山口氏は「札幌のまちづくりで知られる島義勇ら、直正公の下、多くの佐賀藩士が育った。彼らは坂本龍馬や西郷隆盛と同じくらい評価されても良いが、県民でもあまり知らない。この現状を変えたい」と話す。

 佐賀県は来年3月、幕末維新に生きた佐賀の偉人らの歴史を深掘りし、情報発信するイベント「肥前さが幕末維新博」を開く。今回のPVもPRに一役買う。