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男児滑落の尾白川渓谷、北杜署救助隊が点検 人気のコースに潜む危険 山梨

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男児滑落の尾白川渓谷、北杜署救助隊が点検 人気のコースに潜む危険 山梨

 ■浮石・枝など撤去、看板改良や柵必要

 「こどもの日」の5日、北杜市白州町横手の尾白川渓谷で、横浜から両親とハイキングに来た小学4年生の男児(9)が渓谷道から約30メートル滑落し、川で溺死する痛ましい事故があった。事故を重く受け止め、北杜署が19日実施した山岳救助隊による危険場所の調査に同行した。同署は調査後、柵の新設や渓谷道の一部改修、案内板を分かりやすく改めるなど、安全対策の徹底を市に要請した。 

 ◆以前から事故相次ぐ

 日本名水百選の尾白川渓谷は、北杜市が進める「水の山プロジェクト」を象徴する場所だ。駐車場近くには気軽に水と触れ合える淵もあるが、トレッキングコースは急傾斜や道幅が狭い尾根道などが相次ぎ、登山の心構えが求められる。

 それだけに、男児の事故死は地元に大きな衝撃を与えた。渓谷では以前から軽装のハイカーの滑落が相次いでおり、対策の機運が高まっている。

 北杜署の調査は、同署地域課の山岳救助隊員と県山岳遭難対策協議会北杜支部の計9人で行った。

 「素人の気持ちになってどこが危険かを確認してほしい」

 隊長を務める同市小淵沢町の国際山岳ガイド、竹内敬一さん(62)さんが隊員らに指示した。

 一行は「渓谷道」を丁寧に探査し、滑りやすい場所や落石などで壊れた柵、階段などを撮影。転倒の原因となる浮石や倒れた枝を取り除くなどした。

 特に、危険を伝える案内表示については、ハイカーから見た向きや、注意喚起の表現や色の使い方が適切かなど、細かい点もチェックした。

 コースからは旭滝、百合ケ淵、神蛇滝などの渓谷美が満喫できる。だが、幅50センチ程度の道に柵がなく、崖から数十メートルを滑落する危険と隣り合わせだ。北杜署の相沢祐樹地域課長は表示を見ながら、「ただ『気を付けて』だと、景色に見とれて見落としてしまう」と指摘した。

 竹内隊長は「危険を減らすには鎖を付けるしかないだろう」と指摘。現状では「底のグリップがしっかりした滑りにくい登山靴を履き、足元をよく見て歩くことだ」と強調した。

 子供連れの場合は「親とロープで結ぶ必要がある」という。2人とも滑落しても、ロープが木にひっかかる可能性もある。

 5日に滑落した男児も登山靴を履いておらず、同署はやや斜めになった傾斜でバランスを崩した可能性が高いとみて調べている。

 実際に歩いてみると、岩場などの上りで案内が全くなく、コースが極めて分かりにくい所もあった。

 ◆動転せず引き上げを

 調査と併せ、男児の事故現場近くで、山岳救助隊の実地訓練も行われた。隊員がロープで崖下に降り、滑落して負傷した人を引き上げる想定だ。

 「家族は動転し、周囲の登山者も『早く助けてあげて』と言ってくる。そうした現場でも動転せず、5分間で支点や降下方法を的確に決め、ロープなどを正しく装着すること」

 ベテラン隊員が若手らに指示する。どこを降りるかは、降下で落石を起こさないための重要なポイントだという。危険と緊張感を伴う任務だ。

 県内の昨年の山岳遭難は過去最悪の149件。25人が死亡した。

 一方、登山者の生命に別条がないとあまり報道されないが、その影にはこうした地道な訓練の積み重ねがあると痛感した。(中川真)