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関門新ルート実現へ国・自治体・経済界3者検討会が発足

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関門新ルート実現へ国・自治体・経済界3者検討会が発足

 山口県下関市と北九州市の中心部を結ぶ関門新ルート(下関北九州道路)の実現へ、5月下旬にも国、自治体、経済団体の3者が検討会を設立することが19日、分かった。具体的なルートと建設手法などに関し、平成29年度中に調査結果をまとめる。20年度以降、凍結されていた大動脈再構築は大きな一歩を踏み出す。(大森貴弘)

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 新設される検討会には、下関と北九州両市、福岡・山口両県、九州経済連合会など地元の経済団体、そして国土交通省の出先機関が参加する。

 地元自治体や企業が参加する「下関北九州道路建設促進協議会」など、早期建設を訴える団体は複数ある。

 だが、政府が加わった検討会の意義は大きい。

 地元の財界関係者は「最大のメリットは、政府の蓄積した資料を活用できることだ。計画凍結の直前に国の調査はほぼ終わっており、いつでも着工できる状況だった。政府の持つ資料を基に検討すれば、議論もまとまりやすい」と指摘した。

 山口県の村岡嗣政知事も19日の記者会見で「国からの専門的な支援をいただきながら、実現へ具体的な検討をしていきたい」と期待を示した。

 ◆大きな効果

 関門新ルートは政府から“放置”されていた。

 福田康夫内閣は平成20年、紀淡連絡道路(和歌山~淡路島)や豊予海峡道路(愛媛~大分)など、6つの海峡横断プロジェクトを凍結した。同ルートもこの中に含まれていた。

 「(関門新ルートの)調査は今後行わないと決断した」。同年3月、当時の冬柴鉄三国交相(公明)は国会でこう答弁した。

 ところが28年11月、風向きが変わった。

 衆院国土交通委員会で、石井啓一国交相(公明)は「関門トンネルや関門橋のバイパス機能確保など、(関門新ルートは)ほかの5つのプロジェクトとは違いがある」と述べた。

 冬柴答弁を事実上「撤回」し、調査再開に筋道をつける発言だった。

 国交省は29年度の当初予算に、山口・福岡両県などが実施する調査への補助として700万円を盛り込んだ。調査費は総額で2100万円で、残りは2県2市が負担する。

 関連予算がついたことで、政府が検討会に参加できるようになった。700万円という金額以上に、新ルート実現へ大きな効果といえる。

 新設される検討会は、具体的なルートの選定や、橋梁(きょうりょう)かトンネルかといった構造、民間資金を活用するPFI方式を含めた整備手法などについて調査する。

 ◆予算削減の逆風

 4月下旬、石井国交相は下関市の彦島を訪れた。対岸の北九州市中心部に最も近い場所だ。山口県の村岡知事がルートの意義や必要性を説明すると、石井氏は時折うなずきながら、聞き入ったという。

 とはいえ、新ルートを取り巻く情勢は、明るさだけではない。

 政府の29年度当初予算には、道路関連費用として1兆5462億円が盛り込まれた。海峡横断プロジェクト凍結直前の19年度当初予算の5兆8260億円と比べ、4分の1に激減した。

 高齢化による社会保障費の増大などで、交通インフラへの投資は減額が続く。

 国交省は現在、地元の2県2市を補助するという立場だ。予算不足の国交省内には「この状態で数年様子を見よう」との気配も漂うという。

 だが、関門新ルートは喫緊の課題だ。

 関門トンネル(昭和33年開通)は建設から59年が経過した。老朽化が進み、維持管理のための通行止めが相次ぐ。関門橋(48年)も、間もなく44年を迎える。交通事故や台風などが重なり、両ルートがともに通れなくなるケースも実際に起きている。

 九経連の試算によれば、関門トンネル・関門橋が長期遮断された場合、全国で年間14兆円の経済損失が発生する。これは、東日本大震災の被害額に匹敵する。

 単に下関~北九州の利便性の問題ではなく、全国的な危機に直結することを、地元から訴える必要がある。