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【備える】ペット12万匹どこに避難 居場所確保に課題

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【備える】
ペット12万匹どこに避難 居場所確保に課題

 南海トラフ地震などの大規模災害が発生した場合、課題となるのがペットを連れた「同行避難」の問題だ。南海トラフ地震が発生した場合、県では最大約12万匹の犬や猫が避難所に避難すると想定しており、3月に避難所でのペット飼育のルールを示したガイドラインを作成。今月から避難所の運営に当たる県内の各自主防災組織に配布を始めた。

 ◆「訓練しないと…」

 3月12日に住民約120人が参加して行われた富士市依田橋町地区の津波避難訓練。同地区に住む70代の女性は飼い犬の雄のプードル「りょう」君を抱っこして避難先に指定された左富士神社に駆け込んだ。

 同地区でペット同伴の避難訓練が行われたのは初めて。女性によると、りょう君はとてもマイペースな性格で、耳が遠いこともあり、女性が手ぶりで指示を出しても動かず、結局抱きかかえながら避難先に向かうことになった。

 「訓練しないとそう簡単に連れて行くことができないと分かった」と女性。ペットの同行避難訓練などのボランティアを行っているどうぶつ共生防災ネットワークの長谷山鈴江さん(68)は「地震が発生した際はペットも飼い主も恐怖心を持っており、犬の場合は小さい音でほえることもある。だからこそ、ペットを避難所に連れて行くのはものすごく大変」と繰り返しペットとの同行訓練を行う必要性を指摘する。

 避難所の場所やどのようにペットを預けられるのかを事前にきちんと把握し、避難所までの道を散歩などで確認しておくことが重要で、長谷山さんは「地震発生後最低1週間は自分たちで何とかできるように事前に水やペットフードを用意しておく必要がある」と警鐘を鳴らす。

 ◆受け入れ可は24%

 南海トラフ地震が発生した場合、県内では最大約12万匹の犬や猫が避難所に避難すると想定されている。東日本大震災では、ペットの鳴き声やにおいをめぐり避難所で他の避難者とトラブルになるケースが続出。県ではこうした事態を避けるため、平成27年に「災害時における愛玩動物対策行動指針」を策定し、避難所でペット用の場所を事前に決めておくことを各市町に求めた。

 しかし、県衛生課が今年3月末に実施したアンケートによると、県内35市町のうち、全てもしくは一部の避難所でペット受け入れ態勢を「整備済み」とした自治体は19市町にとどまっており、浜松市や湖西市など16市町は全避難所で「未整備」と回答。避難所ベースでみても、県内1323避難所のうち、ペットの受け入れ態勢が整っているのは約24%に当たる314避難所にとどまっている。

 同課によると、避難所でペットを受け入れるかどうかを決める権限は自主防災組織が持っており、ペットを飼っている人が幹部に少ない組織では受け入れに向けた検討が進みにくい環境にある。ペットの受け入れを決めている避難所でもサッカーゴールにペットのひもをつなぎ、ブルーシートで覆ったものをペットスペースとしているところが少なくなく、ペットにとっての環境は快適とはいえないのが実情だ。

 ◆取り残され野生化

 それでも飼い主と一緒に避難所に避難できるペットはまだ幸せかもしれない。厚生労働省の27年度の統計で県内の飼い犬の登録数は22万4060匹。県が南海トラフ地震の際に避難所に避難すると想定している犬の数は最大約7万匹で、残る約15万匹の中には飼い主と生き別れになる犬も出てくる可能性がある。実際、東日本大震災では多くの犬が自宅に取り残されて野生化するなどしたとされる。

 県では大地震で飼い主と離ればなれになったペットについて、西部は県動物管理指導センター、中部は静岡市動物指導センター、東部は各保健所で保護する方針。その後、県動物協会に登録しているボランティア団体を通じて新しい飼い主に引き渡す段取りを描いている。

 しかし、東日本大震災ではペットに関する知識が全くない人が引き取って動物を衰弱させてしまったり、ボランティアで散歩に連れていくと偽ってそのまま連れ去ってしまうケースが続発。県ではこのような事態を防ごうと、避難所でペットに関するトラブルの解決に当たる「ボランティアリーダー」の育成を27年から始めた。

 県では全避難所にボランティアリーダーを配置するために1千人以上の育成を目指しているが、現在登録しているのは29人で、目標にははるかに及ばない状態にある。