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「トヨタ式カイゼン」農業生産に 国内外との競争力強化へ 社員派遣し手法を伝授 長野

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「トヨタ式カイゼン」農業生産に 国内外との競争力強化へ 社員派遣し手法を伝授 長野

 県とトヨタ自動車(愛知県豊田市)は平成29~31年度、自動車生産の効率化を極限まで高めた「トヨタ式カイゼン(改善)」の手法を県内農業生産に導入することを決めた。同社が開発したIT管理システム「豊作計画」を中信地域の農業法人2社による稲作で実証し、製造業同様の生産管理と合理化方式など経営の視点を農業に取り込む。県は、将来的に主力の野菜や果樹にも広げるなど“信州式カイゼン”を確立させ、県内農業に国内外との厳しい競争に打ち勝てる実力を育みたい考えだ。

 ◆コストなど「可視化」

 カイゼンは、製造現場で作業員が知恵を出し合って無駄をなくし、コスト低減を図る活動を指す。トヨタ自動車が、その手法を農業に持ち込んだのは23年のことだ。愛知県弥富市の農業法人「鍋八農産」とタッグを組み、インターネット上でデータを共有するクラウド環境を利用した「豊作計画」を開発した。

 このシステムの最大の特徴は、農作業のコストなどを「可視化」する点にある。水稲栽培にあたって水田面積や作業実績のデータを蓄積し、自動車生産同様の工程管理を実践する。田植えや農薬散布、収穫などの農作業の工程ごとに作業の標準時間を設定。これを実際に要した作業時間と比較し、遅れや進み具合を見て改善すべき点の把握や共有、効率化につなげる。

 トヨタ自動車によると、鍋八農産は資材費を20%、労務費を5%削減することができた。24年からは、石川や愛知両県、北海道でも実証事業が進み、成果を上げているという。

 ◆2法人をモデル選定

 県は29年度、安曇野市の「あづみのうか浅川」と松本市の「塩原農場」の2農業法人をモデル事業体に選んだ。

 トヨタ自動車が両法人に社員を派遣して指導する。同時に県農業改良普及センター(長野市)の若手普及指導員11人に対して講習や研修でカイゼンの手法を伝授してもらう。

 県農政部の北原富裕部長は「これからの農業経営は技術力やマーケティング力に加え、経営改善力が必要だ。(生き残りのために)普及指導員も製造業同様、生産工程管理にまで踏み込んだ改善指導をすることが求められる時代になった」と強調する。

 一方、あづみのうか浅川の浅川拓郎社長は「農業には職人かたぎの部分があってトップダウンの指示や命令が多く、言われたことしかしないスタッフもいる。従業員が課題を自ら解決していく仕組みをつくることで、人材の育成や成長にもつながるのではないか」と成果に期待を寄せた。