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【熱血弁護士・堀内恭彦の一筆両断】令状なきGPS捜査 立法急げ

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【熱血弁護士・堀内恭彦の一筆両断】
令状なきGPS捜査 立法急げ

 去る3月15日、最高裁は、「裁判所の令状なしに捜査対象者の車両などにGPS(衛星利用測位システム)端末を取り付けて行動確認する捜査は違法」との判断を示した。事件は、平成25年の約半年間にわたって、捜査員が連続窃盗犯と疑われる被告人らのほか、その知人も使う可能性のあった車両19台に密かにGPS機器を取り付けたというものである。被告人は犯行自体は認めており懲役5年6月という結論は受け入れていたが、「捜査の過程で行き過ぎがあったのなら、それははっきりしてほしい」と求めていた。捜査側は、「GPS捜査のプライバシー侵害の程度は小さく、強制性はない。現行法の令状でも実施できる」と主張していた。

 しかし、最高裁は、「GPS捜査で個人の行動を継続的、網羅的に把握することはプライバシー侵害に当たる」とし、「公権力による私的領域への侵入となる強制捜査であるから、令状がなければ実施できない」と判断した。これによって、今後、令状のないGPS捜査は不可能となり、そのうえ令状取得にも高いハードルが設けられたため、事実上、GPS捜査は封じられることとなった。

 この最高裁判決は、捜査現場に大きな衝撃を与えた。「裁判官は捜査現場のことがわかっていない」「GPS捜査ができなければ、摘発困難な犯罪が増え、治安が悪化する」など、驚きと困惑の声が広がっている。

 しかし、憲法、刑事訴訟法の「人権保障、適正手続」の理念を尊重する立場からは、この最高裁判決は妥当なものと評価されよう。警察庁も、全国警察に対して、「GPS捜査を控えるように」との通達を出した。

 この最高裁判決によって、今までのGPS捜査に基づいた裁判に大きな影響があるだろう。また、現時点で取り付けられたままになっているGPS機器はどうするのか、取り付けていることを捜査対象者に知らせずに勝手に取り外してしまっていいのか、などの問題も残る。それほど、この最高裁判決が捜査実務に与えるインパクトは大きい。

 しかし、一方で、GPS捜査が広域窃盗事件、薬物事件、テロ対策などの捜査における有力な捜査手法であることは紛れもない事実である。GPS捜査が事件解決につながった例は枚挙にいとまがない。

 今回の最高裁判決も、GPS捜査の有用性自体は認めており、問題点を解決する手段として、(1)実施可能期間の限定、(2)第三者の立ち会い、(3)対象者への事後通知などを例示し、「GPS捜査が今後も広く用いられ得る有力な捜査手法であるとすれば、その特質に着目して憲法、刑訴法の諸原則に適合する立法的な措置が講じられることが望ましい」と述べている。

 GPS捜査に限らず、今後も技術の発達により、新しい捜査手法がどんどん登場するだろう。その場合、常に捜査手法と人権とのバランスが問題になるが、ことは、国の治安、国民の生命・身体の安全に関わることである。捜査現場は「待ったなし」であるから、立法府たる国会が速やかな立法措置をとることを強く期待したい。

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【プロフィル】堀内恭彦

 ほりうち・やすひこ 昭和40年、福岡市生まれ。福岡県立修猷館高校、九州大学法学部卒。弁護士法人堀内恭彦法律事務所代表。企業法務を中心に民事介入暴力対策、不当要求対策、企業防衛に詳しい。九州弁護士会連合会民事介入暴力対策委員会委員長などを歴任。日本の伝統と文化を守る「創の会」世話人。趣味はラグビー。