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衆院区割り見直しで熊本・鹿児島2減 人口減少地域を軽視? 地方創生に赤信号

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衆院区割り見直しで熊本・鹿児島2減 人口減少地域を軽視? 地方創生に赤信号

 政府の衆院選挙区画定審議会が19日に安倍晋三首相に勧告した衆院小選挙区の区割り改定案では、熊本と鹿児島両県で、それぞれ定数が5から4に減少した。平成34年ごろには、人口比をより正確に反映する議席配分方法が導入される。「一票の格差是正」を振りかざすあまり、人口減少地域は国会議員の数が減り、過疎対策が軽視される-。そんな負のスパイラルに懸念の声が上がる。(村上智博)

 ●大都市集中は疑問

 「地方あっての国だが、このままでは、地方の声が国政に届かず、無駄になってしまう。人口だけを基準に議員定数が決まるのはおかしい」

 自民党熊本県連の山本秀久会長(県議)は、こう憤った。

 熊本の5選挙区は現在、自民党が議席を独占する。このうち、元官房副長官の園田博之氏(75)がいる4区は周辺の選挙区に分割・吸収される。

 園田氏は比例代表に回ろうにも、自民党の比例代表候補の「73歳定年制」に引っかかる。そのため、園田氏の秘書も務めた金子恭之氏(56)=5区選出=ら現職との間で、候補者調整が本格化する。

 山本氏は「現職の5人とも選挙区民の投票で勝ち上がった。党本部はその点を踏まえ、選挙区から漏れる現職の処遇も考えてもらいたい」と語った。

 熊本と同じく、鹿児島県も、定数が5人から4人に減る。福岡と長崎両県では一票の格差を「2倍未満」にするため、選挙区の線引きが変更された。

 選挙区だけではない。

 次期衆院選からは、九州比例ブロックの定数も21から20に減る。

 九州のある県の公明党幹部は「一票の格差是正は分かるが、東京など大都市圏への、定数の一極集中は疑問だ」と語った。

 ●人口比も重要だが

 地方の定数削減は、これで終わりではない。

 一票の格差をめぐっては、最高裁大法廷が平成21年以降の3回の衆院選について「違憲状態」と判断し、国会に格差の是正を求めた。

 32(2020)年の国勢調査を基に、議席配分に地域ごとの人口比を正確に反映する「アダムズ方式」が、34年ごろに導入される。

 総務省は昨年秋、27年国勢調査確定値のデータを使い、アダムズ方式で試算した。小選挙区の定数は「7増13減」となり、九州・山口では長崎県と山口県も現在の定数から、それぞれ1減少する。32年の国勢調査では、一部の大都市と、地方の人口格差はさらに拡大するとみられる。地方への定数削減圧力は、さらに高まるだろう。

 国会議員の構成が都市部に偏ることで、地方の声は通りにくくなる。そうなれば、地方創生に必要な施策実現や予算獲得に赤信号が灯る。人口が減少し、一票の格差は再び拡大する。

 諸外国はどうか。米連邦議会の場合、日本の衆議院に相当する下院(定数435)は、人口比に応じて州に議席を配分する。同一州内の選挙区の人口は可能な限り同数にしており、州内の一票の格差は、ほぼ解消されている。

 ただ、州と州の間では、最大で2倍近い格差がある。

 一方、参議院にあたる上院(定数100)は、人口とまったく無関係に、全50州に2議席ずつ割り振っている。上院は各州の権利を反映する存在だというのが、その理由だ。

 この結果、一票の格差は約70倍に達しているが、問題視されていない。

 日本と同じ議院内閣制の英国は、下院で5倍前後の一票の格差がある。是正の動きもあるが、有権者の均衡よりも、地域の特性や伝統を配慮すべきだという意見も根強い。

 人口比も重要だが、地方の声を国政に届け続ける仕組みの構築が急がれる。