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京都「私のしごと館」閉館から7年…今では先端技術の拠点に

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京都「私のしごと館」閉館から7年…今では先端技術の拠点に

 巨額の国費を投じて建設されながら赤字を垂れ流し“無駄遣いの象徴”と批判され、平成22年に閉館した職業体験施設「私のしごと館」(木津川市、精華町)が、ベンチャー企業などが集まる先端技術開発拠点として生まれ変わり活気を見せている。

 しごと館は独立行政法人の雇用・能力開発機構(23年解散)が雇用保険料約580億円を使い15年にオープンした。敷地面積は約8万3千平方メートルと広大で、3階建ての豪華な建物には、声優やプログラマー、美容師といった約50種類の職業を主に中高生が体験できる設備が整った。

 しかし甘い運営計画や、来館者数の伸び悩みがたたり毎年10億円超の赤字に。「無駄なハコモノ」「官僚の天下り先」。世論の強い批判を受け、廃止が決まった。

 引き取り手がなく“空き家”状態が続いたが、26年に国が京都府に無償譲渡。大阪、奈良を含む3府県にまたがる関西文化学術研究都市の中核にしようと府が整備を進め27年4月、「けいはんなオープンイノベーションセンター」として再始動した。

 「ここに入った当時は(展示物の)人形が転がっていました」。エネルギー消費の効率化につながる膜分離技術を開発するベンチャー企業「イーセップ」社長の澤村健一さん(37)は、入居した時のことを笑って振り返る。

 早稲田大大学院で応用化学を専攻し25年に起業。広い割に安い家賃と、大学や他企業と交流しやすいことを魅力に感じ、各地にあった事務所や研究施設を集約した。「お隣さんとの交流で刺激を受けたり、高価な研究装置を貸し借りしたりとメリットが多い」

 府によると2月末時点の入居企業・団体数は22に上り「既にスペースの7割が埋まり好調」(特区・イノベーション課)。導電性に優れた繊維を開発する企業や、京都情報大学院大学が設置したIT関連の研究所などさまざまだ。

 若手技術者らと多忙な日々を送る澤村さん。「インパクトのある技術と事業でここから世界に打って出たい」と力を込めた。

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【用語解説】私のしごと館

 若者の職業意識の向上を目指して建設された。赤字が続いたため一時、民間企業に運営を委託。収支の改善を目指したが、平成20年に廃止が決まった。オープンから7年がたった22年3月、閉館した。