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【大潟村はいま 農業の将来像を問う】(下)大規模化、頼りは外国人

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【大潟村はいま 農業の将来像を問う】
(下)大規模化、頼りは外国人

 ■「身の丈に合わせて」の声も

 農家1戸当たりが保有する農地が平均18ヘクタールという大規模経営の大潟村。野菜などへの転作が奨励されているとはいえ、作付面積の95%は稲作だ。

 宮川正和さん(54)はコメから野菜に転じて20年になる。父親が大潟村に入植した「第2世代」。減反政策に翻弄された親たちの苦労を見て「コメ作りの大規模経営は無理」と諦めた。現在は村のほか、北秋田市や男鹿市でもネギなどの栽培に従事する。

 夏場はカボチャの露地栽培、冬場はビニールハウスでベビーリーフを育てるなど年間を通じた作業で、村外の土地を確保することで規模拡大を進める。現在は経営する農業法人で十数人の従業員を抱えるが、慢性的な人手不足に悩む。

 「コメ作りは田植えから収穫まで機械化されている。でも、野菜は苗の植え付けから収穫まで、人手に頼る部分が多い。以前は農家の女性たちが手伝ってくれたが、高齢化が進んでおり、もう難しい」

 業を煮やした宮川さんは今春、3人のベトナム人男性を会社に受け入れる。外国人が日本で技術を学び、本国に戻って指導的立場になる-との狙いで設けられた政府の「外国人技能実習制度」を活用する。

 いずれも20~30歳代で、大卒など高いスキルを持つ。「日本人で同レベルの人材を雇いたくても無理。働いてくれた外国人が帰国して、うちの支社のような形で仕事をしてくれるのが理想」と宮川さんは言う。

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 大潟村の高橋浩人村長(56)は昨年10月、政府の国家戦略特区諮問会議で、村を外国人就労者の受け入れを前提とした農業特区とすることを要望した。

 「人手不足は園芸など稲作以外の農家も危機感が強い。パートナーとして大潟村で新規に就労し、家族も持って長く暮らしてくれる人が望ましい。国内の農業系大学には、すでにアジアなどから多くの留学生が来ている」(高橋村長)

 同様の農業特区については昨年8月、長崎県と茨城県が政府に要望を出した。「県単位の方が、閑散期に他地域の農家で働く仕組みを作りやすく合理的」という指摘もある。ただ、秋田県の佐竹敬久知事は「外国人は、郡部に赴くことに拒否反応が若干ある」と話すなど温度差がある。

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 政府は10日、国家戦略特区で、農業分野での外国人受け入れ解禁を閣議決定した。山本幸三行政改革担当相は最近、将来的には特区以外でも認める方針を示しており、外国人活用が一気に現実味を帯びてきた。

 大潟村では宮川さんのように、村外に農地を確保してさらなる大規模化を進める動きもある。衛星利用測位システム(GPS)やドローンを使った、遠隔操作による生育状況の可視化や温度・湿度の管理など先端技術の研究や、大規模経営の高度化も進む。

 一方で、若い世代の間には大規模化に懐疑的な見方もある。農地は30ヘクタールを境に「より大型の機具が必要になるなどコストが増す」(大潟村産業建設課)との試算もある。

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 人口減時代の日本。海外輸出も道半ばの今、生産量だけを引き上げて、消費先が確保できるのか。村への入植「第2世代」で十数年前から野菜を手がける信太惇吉さん(41)が疑問を投げかける。

 「輸入野菜が席巻する国内市場は、まだ国産野菜を受け入れる余地がある。それでも、旬の野菜を身の丈に合った家族経営で作っていくのが本来の農家の姿ではないか」

 外国人活用、コメの6次産業化、海外輸出、野菜や園芸品目への転作、大規模経営の限界…。試行錯誤を重ねる大潟村の農業は、日本の農業の将来像の縮図と課題を示している。「いまはいろんな価値観を見直す過渡期に来ている」と信太さんは話している。

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 この連載は藤沢志穂子が担当しました。