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小豆島で石割の技に迫る 奈文研など復元と継承へ実験

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小豆島で石割の技に迫る 奈文研など復元と継承へ実験

 江戸初期の大坂城再建で大量に巨石を産出した小豆島(香川県)の石割技術の復元と継承に取り組む奈良文化財研究所(奈良市)を中心とした研究チームが2日間にわたって、小豆島町福田地区にある石材業の工場で、道具の製作と石割の実験を行った。貴重なデータが得られたという。

 研究チームは、城郭の石垣を専門に、使用される石材や加工技術、加工工具について学術的に研究する人や、東京都中央区に残る石橋「常盤橋」の修復に携わる石工らで構成。製作・実験には約20人が参加した。

 11日は、石を割るための鋼鉄製の道具で、石の表面に直線状に枡形の穴「矢穴(やあな)」を彫る先端のとがった棒状の「鑿(のみ)」と、穴に差して打ち込むことで穴を押し広げて石を割るくさび状の「矢(や)」の鍛造加工を体験。地元で中世から近世の石割技法を独学で研究する藤田精さん(48)が指導した。

 矢は、慶長年間(1600年初頭)の鍋島藩(佐賀県)の川上石切り丁場跡に残る矢穴から推測した厚さ3・5センチ、幅8・3センチの板状と、元和年間(1620年代)の小豆島にある黒田藩(福岡県)の丁場跡の矢穴から推測した厚さ5センチ、幅5センチの角柱状の2種類を製作した。

 翌12日は石割を実験。藤田さんが、長さ5メートル、幅1・5メートル、厚さ1・2メートルの花崗(かこう)岩(約12トン)に鍋島藩型の矢に合わせた列に6個、黒田藩型の列に9個の矢穴を加工して準備した。

 参加者らが見守る中、藤田さんが「矢じめ」と呼ぶ金づちで矢を打ち込んでゆくと、乾いて響く音からこもった音に変わり、「ぴしっ」と静かな音を立てて石が割れた。

 実験結果の比較で、1個の矢を矢じめで打つ回数は黒田型は鍋島型の半分で、矢穴の面に残る矢との摩擦跡は黒田型は線状に鍋島型は面で残り、作用点のでき方から黒田型の効率が高いことが分かった。

 奈良市の研究者、佐藤亜聖さん(44)は「短期間で矢と鑿が改良されている」。金沢市で金沢城を研究している北垣聰一郎さん(78)は「矢より矢穴の加工が重要。大名間の情報交換があったのではないか。やってみないと分からないことがあり、貴重な実験」と話した。

 奈文研の高田祐一さん(34)は「石を押し広げる矢と矢穴のかみ合いの数値、作業ごとの所要時間など多くのデータを得た」として、実験内容を学術的に図面化し、作業ごとに短編動画を作成して、再現や保存、継承とともに今後の研究に利用する。