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福岡の建設資材リース「拓新産業」、社員満足主義で就職希望殺到

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福岡の建設資材リース「拓新産業」、社員満足主義で就職希望殺到

「社員を守る選択をした」と語る拓新産業の藤河次宏社長 「社員を守る選択をした」と語る拓新産業の藤河次宏社長

 ■残業ゼロ 2―3人の採用枠に数百人

 お得意さまよりも社員が大事-。発想を転換し、残業ゼロを実現した企業がある。福岡市早良区の建設資材リース「拓新産業」は、「社員満足主義」を掲げ、完全週休2日、有給休暇100%取得を果たす。半面、営業時間内は顧客へのサービスを徹底し、黒字経営を続けている。

 「若者に人気のない中小企業をどうやって魅力的にするか。考えた結果ですよ」

 創業者の藤河次宏社長(71)が穏やかな表情で、これまでの経緯を語った。

 創業は昭和51年。当初は食っていくため、がむしゃらに働いた。変わるきっかけは約30年前の合同企業説明会だった。初めて新卒を採用しようと参加したが、自社のブースを訪れる学生が一人もいなかった。「何とかして人材を確保できるようにしなければ」。危機感が募った。

 まず、有給の完全消化に取り組んだ。「休むと評価や昇級に影響する」との反発もあったが、朝礼で休んでいない社員の名前を読み上げる“手荒な”やり方も使って「休むのが当たり前」という雰囲気を定着させた。残業の見直しも進め、今では、社員の平均残業時間は年間2時間と、「ほぼゼロ」を達成した。

 こうした働き方ができるようになったのは「お客さまは神様」という考えを捨てたから。

 「残業はしない」「休日は仕事を受けない」。取引先を回って理解を求めた。営業時間後に資材を返しに来てもゲートを開けず、自社の姿勢を貫いた。

 かつては売り上げの2割を、ある1社との取引が占めていた。「大口に依存する方が楽だけど、無理な注文を断れなくなるから」。新規の取引先を開拓し、今では約200社から広く薄く仕事を受けるやり方に改めた。社員を守るための選択だった。

 もちろん、受けた仕事は絶対に手を抜かない。交際費だけでなく、年賀状や歳暮も廃止するなど徹底的なコスト削減を推し進める。社員はみな、てきぱきと働く。「一人一人が工夫して仕事の省力化、効率化を進めた結果、生産性も上がった」という。

 今では2、3人の採用枠に数百人の希望者が殺到する。「組織は人で成り立つ。働く人たちの幸せを犠牲にしてまで成長を追い求める必要があるのか」。藤河氏はこう語った。