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【震災6年-茨城 未来を見つめて】(上)定住進む福島からの避難

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【震災6年-茨城 未来を見つめて】
(上)定住進む福島からの避難

 ■新住民多いつくばに集中

 「行ってきまーす。今日こそテストはバッチリだからね」

 「この間も同じこと言ってたじゃない。今度こそお願いよ」

 つくば市の中学校に通う男子生徒(14)と母親の笑い声が住宅街に響いた。今では男子生徒もすっかり明るくなり、つくば市になじんでいる。母親もそんな息子を少し頼もしく思い、いつまでも後ろ姿を見守っていた。

 一家にとってつくば市は第二の故郷だ。平成23年3月の東京電力福島第1原発事故で福島県からの避難を余儀なくされた。東京でも暮らしたが、つくば市への定住を決めた。男子生徒も「大人になって出身を聞かれたら、『おれは福島県生まれだけど、出身地はつくば市』と胸を張って答える」と力を込めた。

 こんなケースは決して珍しくはない。県防災・危機管理課や福島県避難者支援課などによると、茨城県内には2月時点で福島県から3708人が避難している。東京都(5141人)、埼玉県(4027人)に続き全国で3番目に多い。県内の市町村別では、つくば市540人、日立市420人、水戸市384人の順となっている。福島県に隣接する北茨城市は342人だ。

 ◆特殊性と手厚い支援

 なぜ、つくば市が多いのか。福島県からの避難者の支援活動をしてきたNPO代表で筑波学院大(つくば市)の武田直樹講師は「つくばの特殊性が大きい」と分析する。つくば市には並木や吾妻などに空いていた国家公務員宿舎があり、原発事故直後から避難者は多かった。だが、東京や埼玉などを経由して、つくば市に転入してくる避難者が多いという。

 つくば市では当初から大学生やNPOが避難者への支援や交流会を開いてきたほか、行政も戸別訪問などに力を入れてきた。県も避難者が多い並木地区の小中学校に福島県の教諭を派遣し、児童や生徒の心のケアや進路指導を行ってきた。こうした支援は現在も続き、避難者の間で「住むならつくば市が良い」と口コミで広がっているという。

 また、筑波研究学園都市は転入者ばかりのため、新たな転入者を「よそ者」扱いするようなことが起きにくいことも、子供や母親に安心感を与える要因の一つになっているとみられる。

 ◆安定した生活志向

 茨城大(水戸市)人文学部市民共創教育研究センターが福島県からの避難者を対象に28年3~5月に実施した調査によると、回答者の56・1%が茨城県に定住するか、長期間の居住を考えていた。「定住・長期居住」志向は26年の前回調査から26ポイント増え、避難者が県内での安定した生活を望む傾向が強まっている。

 また、すでに茨城県に家を購入した避難者の割合は50・9%で前回から30ポイント以上増えた。アンケートを実施した同学部の原口弥生教授(環境社会学)は「震災から6年がたち、腰を落ち着けたいと考えている人が増えている」と分析する。

 原口教授は避難後も震災前と同じ仕事を続けている割合が44・5%と高い点にも注目し、「他県には見られない特徴だ」と指摘する。県北地域に避難した人たちは、震災前から働いていた職場への通勤が可能な場合が多い。職場が被災していても、同じ企業の県内の事業所などに異動することで仕事を続けられている避難者もいるという。

 原口教授は「避難から定住へ、避難者らの生活の段階は変わりつつある。支援する側も考え方を変える必要がある」と指摘する。

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 東日本大震災から11日で6年を迎えたのを機に、これからの茨城を3回にわたって連載します。次回は14日に掲載します。