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【想う 6年目の被災地】1月

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【想う 6年目の被災地】
1月

 □石巻市営新立野第2復興住宅団地会会長・増田敬さん(65)

 ■住人の要望、絶えず訴えていく つながり切れないよう働き掛け

 東日本大震災で被災した宮城県石巻市民の入る災害公営住宅の住民組織のリーダーを担う。集合住宅8棟。入居者100世帯200人の大所帯を束ねる。

 被災地では被災者向けの住宅整備が進み、住まいは仮住まいの仮設住宅から生涯の住居となる災害公営住宅に移っている。

 「被災者の住環境は避難所から仮設住宅、災害公営住宅への移行に伴って改善された。だが、皮肉にも段階を踏むにつれて住人の孤立化が進んでいる」

 被災者の人間関係は2回破壊された。最初は震災で。多くの人が身内、ご近所、友人を失う。避難所に一人身を寄せ、孤独感を味わった。

 次は災害公営住宅に入る時だ。災害公営住宅の入居は基本的に抽選制。新立野住宅も市内全域の仮設住宅から入居者が集まり、必然的に知り合いが減る。仮設住宅時代に人間関係を築き直しても、抽選を通じてシャッフルされる。再び振り出しに戻り、再構築を迫られる。

 いったん壊れた人間関係をつくり直すのは大きなエネルギーを要する。お年寄りは特にしんどい。

 「物は考えよう。仮設住宅と違い、災害公営住宅は一生の住まい。そうなると人は近所付き合いや自治会運営に本気になる。住環境の改善も好影響をもたらす。隣人の話し声が気になった仮設住宅のストレスから解放され、ご近所にも気を向ける余裕が出てくる」

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 新立野住宅の団地会は集会所で定期的に住人参加の催しを開いている。茶話会。絵手紙教室。民謡サークル。交流を深め、孤立化防止に役立っている。

 だが、効果は一定程度。各被災地の災害公営住宅では「催しを開いても参加者は決まった顔触れで、家に閉じこもりがちな人の参加を促すまでに至っていない」という共通の悩みを抱えている。

 「内向的な人を無理に引っ張りだす訳にいかないから、こっちから出向いて話し相手になる。中には気難しい人もいるが、そういう人は実は意識が高く、いったんコミュニティーづくりに協力してくれたら建設的な意見を言ってくれて頼りになる」

 「公益的には行政の見回り隊やヘルパー、訪問看護師と住人のつながりが切れないよう働き掛ける。行政の対応がスピーディーでなかったり、制度的な制約できめ細かいサービスを受けられなかったりする場合があるので、住人の要望を絶えず訴えていきたい」

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 自身も石巻市の自宅が津波で流された。仮設住宅の時に自治会長を務めた経緯もあり、災害公営住宅のまとめ役を任された。

 「組織的には現時点で団地会にとどまり、活動に制約がある。自治会に格上げし、活動の幅を広げたい」

 新立野住宅は、被災地のコミュニティーの在り方を研究しているトヨタ財団(東京)の調査で「集会所や菜園など共用スペースの使い方がうまく、住人が協力して活動している」と評価された。

 財団はコミュニティーづくりがうまくいっているか否かの目安の一つに「夏祭りが開催できているかどうか」を挙げる。夏祭りは準備、本番を通じて手間が掛かり、住民組織の地力を見るのに適しているそうだ。

 新立野住宅は昨年8月、500人の参加する大規模な夏祭りを成功させている。(伊藤寿行)

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【プロフィル】増田敬

 ますだ・けい 昭和26年、石巻市生まれ。地元で造船所、水産加工会社に勤務した。市内の複数の災害公営住宅の住民組織をまとめる「石巻じちれん」の会長も務める。