産経ニュース

下関市長選、「安倍VS林」本当に代理戦争? 「おひざ元」の構図混沌

地方 地方

記事詳細

更新


下関市長選、「安倍VS林」本当に代理戦争? 「おひざ元」の構図混沌

 来年3月の市長選をめぐり、山口県下関市が揺れている。これまでに3選を目指す現職で、林芳正元農水相に近いとされる中尾友昭氏(67)と、元市議で安倍晋三首相の秘書だった前田晋太郎氏(40)が出馬を表明した。かつて安倍首相と林氏の父親同士が、激しい選挙戦を繰り広げた土地柄だけに、「安倍VS林の代理戦争」との観測もある。ただ、内実はそう単純ではないようだ。(大森貴弘)

                  ◇

 「(前田氏が)勝つための筋道を付けてやってくれ」

 12月初め、安倍首相のもとを、立候補表明のあいさつに前田氏が訪れた。安倍首相は、同席した地方議員らにこう頼んだという。

 前田氏は、安倍首相の秘書を7年4カ月間務めた後、平成23年の市議選で初当選した。

 「新規事業のモデルケースに手を挙げるなど、首相の地元としてのメリットをもっと生かすべきだ」と、安倍首相との距離の近さをアピールする。

 一方の中尾氏は、下関唐戸魚市場の取締役などを経て、平成21年の選挙で当選し、市長に就任した。下関唐戸魚市場は、林元農水相の支援団体として知られる。実際、中尾氏の後援会のメンバーには、林氏の支援者が名を連ねる。

 中選挙区時代、安倍氏の父・晋太郎氏と、林氏の父・義郎氏は、自民党同士で激しい選挙戦を繰り広げた。選挙区内を二分した影響で、下関の街は今も安倍系、林系の色分けが残る。

 こうした経緯から今回の市長選を「安倍VS林の代理戦争」とする見方もある。

 だが、「党派を超えた市民党」を標榜する中尾氏の陣営には過去、安倍氏の後援会メンバーも加わっていた。今回も前田氏支援を決めかねている安倍氏の支援者もいる。

 単純な色分けは難しい。

 ◆“市民党”への不満

 それでも2期8年の中尾市政に、不満がくすぶっているのは確かだ。

 中尾氏は、旧民主党支持層への浸透も図った。平成22年6月、菅直人政権の発足直後に官邸を訪れ「下関奇兵隊」の幟(のぼり)やフグの刺し身を手渡した。

 その姿に自民党王国の下関から、不満が噴出した。

 「本当にみっともない。いかに当時は民主党政権だったとはいえ、ノコノコと出かけて…。日和見主義が一番信用できない」。地元の政界関係者は厳しく指弾する。

 市政における公約違反を指摘する声もある。

 中尾氏は初当選した平成21年の選挙で、現市庁舎を耐震補強して継続使用▽関門海峡を望む埋立地「アルカポート地区」に芝生公園整備-などの公約を掲げた。

 だが、実際には大きく方向転換した。市庁舎隣接地に9階建ての新館を建設し、アルカポートには遊園地も開設した。今後、都市型ホテルの誘致を進めるという。

 それでも中尾氏は、これまでの公約達成度は「合格点にある」と自賛した。

 前田氏は、こうした点を衝き、支持拡大を目指す。安倍首相の発言通りに、安倍後援会がどこまで一枚岩になれるかが、勝敗の鍵を握る。

 ◆自民推薦の行方

 市長選には中尾、前田両氏のほか、複数の自民系市議も立候補を模索する。

 市長選への注目が高まる中で、今月7日、中尾氏は2日前に自民党下関支部に出した推薦願を突然、取り下げた。

 中尾氏は過去2回の選挙で、どの政党の推薦も得なかった。ところが今回、前田氏が自民党に推薦願を出したため「相手が出したから自分も、と考えて出した」(中尾氏)という。

 この行動に支援者が反発した。「市民党の旗を掲げ続けるべきだ」。声に押され、中尾氏は推薦願を取り下げた。

 一方の前田氏は、11月29日付で推薦願を提出した。自民党下関支部は今月14日の執行役員会議で最終的な結論を出すとしている。

 今月5日、安倍首相の第1次政権を含めた在職日数が歴代6位となった。最近の政権では抜群の安定感を誇る。それでもおひざ元の市長選の構図は、混沌としてきた。