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「三浦の素顔」水産市場に展示 ポートレートで風土や歴史表現

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「三浦の素顔」水産市場に展示 ポートレートで風土や歴史表現

 冷凍マグロの横で誇らしげに立つ男性や巨大なトラクターの上にあぐらをかく女性など、漁業と農業が盛んな三浦市の“素顔”をモノクロのポートレート約40枚で表現した「三浦の人びと展」が「三浦市三崎水産物地方卸売市場」(同市三崎)で開催されている。市場の天井から写真がつり下げられるなど展示方法もユニークで、実行委員の桑村治良さん(42)は「写真を見ながら、三浦の息づかいを感じてほしい」と話している。

 今回の写真展は、ドイツの写真家、アウグスト・ザンダー(1876~1964年)が20世紀初頭に試みたポートレート写真によって社会の全体像を記録しようとした作品「20世紀の人間たち」を下敷きに、三浦の風土や歴史、産業を表現したものだ。

 ◆風情ある港街

 同市は農業と漁業が代表的な産業で市内全労働者の中で第一次産業の従事者は11・7%(平成22年)と県平均(0・9%)を大幅に上回っており、数世代にわたって家業を続けてきた人が少なくない。

 同市は昭和30年代から40年代初頭にかけて、国内有数の遠洋漁業基地として隆盛を極めたが、その後の石油ショックや各国の排他的経済水域設定などを受け、大きな打撃を受けた。これにともない三崎港の水揚げ高も大幅に減り、人口流出は現在でも著しい。

 一方で、風情ある港街の情景や細い路地裏など昭和の街並みがそのまま残っていることから、街の個性を人にフォーカスし、写真で表現する試みが今春からスタートした。

 ポートレートは縦100センチ、横70センチと大きく、農業や漁業関係者だけではなく、88歳の現役医師やスナックのママ、パン職人、ユネスコの無形文化遺産にも登録された伝統行事「チャッキラコ」の衣装を着た女児、小学校校長、乳児を抱えた母親など三浦に息づくさまざまな人々を被写体とした。

 ◆動画アプリ開発

 動画アプリも開発し、写真のモデルとなった人々のインタビュー映像をスマートフォンを通じてみることもできる。会場ではさまざまな魚の水揚げを行っていることから「三浦の基幹産業である漁業の空気やにおいを感じながら鑑賞してほしい」(桑村さん)としている。

 撮影を担当した逗子市在住の写真家、有高唯之さん(45)は「三浦市内は至る所に撮影ポイントがあり、写真家にとってこれほど恵まれた地域はない」と話し、「今後はアートで三浦を元気にしていくことができれば」と意気込んでいる。

 同展は11日まで。午前10時~午後5時。入場無料。問い合わせは、事務局(電)050・3706・8669。

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【用語解説】ポートレート

 人物を撮った写真、または肖像画のこと。写真の場合、その写真のメインとなる物体が人物であるもの。文章による人物描写をこう呼ぶこともある。

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【用語解説】チャッキラコ

 江戸時代上期に豊作・大漁祈願、豊作・大漁祝いを含めた祝福芸として誕生した三浦市三崎の民俗芸能。小正月の行事として伝承され、大人の女性の唄に合わせて少女たちが優雅に舞を披露する。舞扇と、「チャッキラコ」と称する綾竹に鈴と飾りをつけた道具を使い分けて踊る。踊りには「はついせ」「チャッキラコ」「二本踊り」「よささ節」「鎌倉節」「お伊勢参り」の6通りがある。昭和51年に国の重要無形民俗文化財に指定された。