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政府が改革方針決定「必要なのは“強い”農協」 福岡

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政府が改革方針決定「必要なのは“強い”農協」 福岡

 「強い農業」を目指し、全国農業協同組合連合会(JA全農)の事業刷新などを盛り込んだ政府の農業改革方針が29日、正式決定された。米国のトランプ次期大統領によって環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は不透明となり、わが国の農業環境の行く末はさらに見通しにくくなった。それだけに、農業王国・九州の関係者からは「強いJA」を望む声が上がった。(中村雅和)

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 「農家のためにスタートした農協だったが、今は准組合員が(正組合員より)はるかに多い。時代が変われば、必要な事業と不要な事業が出てくる」。熊本県阿蘇市内牧の農業生産法人、内田農場の内田智也社長はこう語った。准組合員は農協の保険・ローン利用者で、農家とは限らない。

 内田農場は米農家として、九州屈指の規模を誇る。外食や大手コンビニエンスストアなど、業種業態に応じて、10品種程度の米を生産する。JAを通さず、卸業者を通じて販売する。

 「用途や好みによって、必要とされる品種は違う。JAを通す流通の仕組みは、こうした需給バランスを反映できていない面がある」と訴えた。

 現在、JAを通す場合「委託販売」が主流だ。JAが返品や在庫リスクを負うことはない。半面、JA側は売り先のニーズ把握や販路開拓に鈍感だと、指摘される。

 また販売価格は、複数農家の平均で設定することも多く、変動幅が小さい。小規模農家にとっては恩恵だが、やる気がある農家には、努力が価格に反映しないという不満が募る。

 政府が決めた農業改革方針では、JA側が農産品を買い取る方式に改める。

 JAにも農家にも、市場をより意識した経営が求められる。内田氏は「地域、農家のつながりを考えれば、JAそのものは必要だ。地域活性化に、JA側にも知恵を絞ってほしい。切磋琢磨(せっさたくま)し、ともに働ける強い組織になればよい」と語った。

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 安倍晋三首相は、全農改革を「農業の構造改革の試金石」と位置付けた。

 議論の過程では、政府の規制改革推進会議農業ワーキンググループ(WG)と、「抵抗勢力」と位置づけられたJA側の熾烈(しれつ)な綱引きがあった。

 農協関係者は、WGに反発しながらも、自己改革の必要性は認める。

 「われわれも農家の収入拡大のために必死で改革を進めている。決して何もしていないわけじゃない」

 JA宮崎中央会の西田和夫JA改革推進室長は、こう語気を強めた。

 宮崎中央会は、収量拡大と品質向上を目標に、生産技術・土壌改良に関する農家指導や、作物の品評会に力を注ぐ。他産地と積極的に情報交換し、より高く売れる出荷時期や量の管理に取り組む。

 農協が販売する肥料など農業資材の価格が、割高だという指摘もあった。これに西田氏は「資材の販売収入を、農家指導などの費用に振り分ける部分も大きい。地域の実情にあった改革を進めるには、時間も必要だ」と反論した。

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 農協改革は、より強い農業を作るための「手段」だ。農業が国際競争力を高めれば、TPPにも対応できる。

 ただ、米国のトランプ次期大統領は「就任初日にTPPから離脱を表明する」と明言した。米国が離脱すればTPPは発効しない。

 これまでTPPに反対してきた農協関係者は、トランプ登場に安堵(あんど)しているわけではない。

 JA熊本中央会の藤川修朗農政対策部長は「トランプ氏は2国間貿易協定に言及した。日米2国間で農業が議題になれば、TPP以上に厳しい内容になる可能性を否定できない。危機感は変わらない。農協もこれまで以上に自己改革しなければならない」と語った。