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近代の日光、多角的に紹介 栃木県立博物館 11月20日まで企画展

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近代の日光、多角的に紹介 栃木県立博物館 11月20日まで企画展

 県立博物館(宇都宮市睦町)で開かれている「NIKKO-国際観光都市・日光の成立-」(11月20日まで)では、700点近い資料と写真パネルで国内有数の観光地として発展してきた近代の日光を多角的に紹介している。世界遺産の2社1寺だけではない日光の多彩な魅力が詳しく解説されている企画展だ。

 ▼外交官の避暑地

 今年7月に一般公開された英国大使館別荘記念公園や平成12年公開のイタリア大使館別荘記念公園が人気スポットになっている中禅寺湖畔。明治以降、各国の大使館別荘が並ぶ外交官の避暑地としてにぎわった。

 海外に日光を紹介した英国外交官、アーネスト・サトウの専用トランクや直筆の日本語の手紙、英国人実業家、ハンス・ハンター愛用の釣り具など日光を愛した外国人たちのプライベートが分かる貴重な資料も並ぶ。また、今も営業している日光金谷ホテルの宿帳には、サトウやヘボン式ローマ字のヘボン博士、英国の女性旅行作家、イザベラ・バード、物理学者、アルベルト・アインシュタインらの直筆署名が残る。

 鉄道関係の資料も豊富でマニアの注目も高い。現在のJR日光線と、早くから電車での高速輸送に力を入れた東武鉄道に加え、欠かせないのが山道を行く路面電車「日光電気軌道」だ。日光駅前からいろは坂入り口の馬返(うまがえし)まで約1時間。馬返からケーブルカー、ロープウエーなどで中禅寺湖までつながった。昭和43年に廃止され、今は面影もないが、同館の伊藤康行主任研究員は「50、60代の人には記憶がある」。開業は明治43(1910)年。日光には水力発電もあり、蒸気機関車中心の時代、電車は最先端の交通機関だった。

 ▼地元の熱意

 観光地として発展していくと、写真を載せた案内書や絵はがきが製作されるようになった。異彩を放つのが白黒写真に手作業で色を付けた手彩色写真。一流技師や絵師が手がけ、カラー写真と見まがうものもあり、伊藤さんは「浮世絵の文化など日本の技術が生かされている」。手彩色写真の写真帳も出版され、外国人向けの土産品として人気を博した。一方で安価な絵はがきには雑な色付けのものも。大量生産の需要があり、業者によって出来栄えに差があったという。

 日光を描いた絵画では、地元出身の洋画家、小杉放菴(ほうあん)(1881~1964年)や写実性に優れた五百城(いおき)文哉(ぶんさい)(1863~1906年)、風景版画で人気の高い川瀬巴水(はすい)(1883~1957年)らの作品が数多く展示されている。

 徳川家康が祭られた日光東照宮は江戸時代、幕府が手厚く保護してきたが、明治維新で状況は一変。地元には危機感があり、住民によって保晃会(ほこうかい)が結成された。伊藤さんは「日本で最も早い文化財保護活動」と解説する。旧幕臣も賛同。このときの地元の熱意が日光を観光地として繁栄させ、現在につながった。これらの活動を伝える貴重な資料も数多く展示されている。

 月曜と11月4日休館。30日には、吉良芳恵・日本女子大教授の記念講演「日光を愛したアーネスト・サトウ」が開かれる。要予約。問い合わせは同館(電)028・634・1311。