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「幻の小絵馬の姿知って」 「足利絵馬の会」会長・小倉喜兵衛さん復元

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「幻の小絵馬の姿知って」 「足利絵馬の会」会長・小倉喜兵衛さん復元

 市民団体「足利絵馬の会」会長の小倉喜兵衛(きへえ)さん(83)が、足利市内の寺社に奉納された小絵馬38種類を手作りで復元した。繊維業の商売繁盛を願う繭玉や安産祈願のクリなどの図柄があり、縁切りを表す太刀など伝承だけを頼りに描いた作品も。全国の寺社で干支などの規格品の絵馬があふれる中、小倉さんは「本来の絵馬の姿、絵馬に込められた庶民の願いを知ってほしい」と話している。

 小倉さんは40年前からサラリーマンの傍ら、絵馬の魅力にひかれ、絵馬の会を結成し、副会長の倉林正光さんらと地道に調査。平成21、22年度に文化庁と市の依頼で市内全域の寺社約350カ所を調べ、小絵馬58種類約5万枚を確認した。

 足利は小絵馬の宝庫といわれ、大正時代には米国の人類学者、フレデリック・スタールが水使(みずし)神社(同市五十部町)を訪れ、「日本における最も驚くべき、また最も赤裸々な絵馬の宝庫」と絶賛。以来、民俗学者に注目され、研究者の間では小絵馬研究の「足利詣で」が続いた。

 一方、小絵馬は奉納後のおたき上げや、専門の絵馬師が姿を消したことで、昭和40年代以降、干支や寺社の風景画を描いた規格品が一般的となった。このため本来は、神仏と祈願者の秘密の約束事として匿名だった風習が崩れ、裏面に記名、願い事も書き入れるようになったという。古い小絵馬はその希少性からマニアの間で取引されている。

 小倉さんは今年夏、「足利の貴重な小絵馬を後世に伝えよう」と思い立ち、文献を参考にスギ板に手書きでコツコツと図柄を描いた。38種類の内5種類は現物が存在せず、古老の伝承を元に作り上げた。

 その一つが縁を断ち切る意味の「太刀」で、日本三大縁切り稲荷(いなり)で有名な門田稲荷神社(同市八幡町)に奉納されたとされる。同神社には、女遊びを諫(いさ)めた女の文字と錠前を描いた小絵馬もある。

 「くり」の小絵馬は鑁阿寺(ばんなじ)(同市家富町)に奉納され、いがからクリの実がこぼれている様子が安産の祈りを表した。水使神社は女性に御利益があるとされ、「乳もらい」の図柄は乳房から乳が出ている。

 小倉さんは「昔の絵馬は図柄で切実な思いを伝えているだけに、一つ一つが機知に富んで、興味深い」とその魅力を話す。近く展示・販売を予定。問い合わせは小倉さん(電)0284・62・9768。(川岸等)